学会|2025年10月27日掲載
「接着の今、そしてこれから ~継往開来~」をテーマに
第44回日本接着歯学会学術大会開催
さる10月25日(土)、10月26日(日)の2日間、日本大学歯学部(東京都)において、第44回日本接着歯学会学術大会(小峰 太大会長、二瓶智太郎理事長)が、「接着の今、そしてこれから ~継往開来~」をテーマに開催された。
1日目は、理事長講演として二瓶氏(神奈川歯科大学歯学部臨床科学系歯科診療支援学講座)が「再び、臨床から基礎研究へ! 基礎研究から臨床応用へ!」と題し講演した。
特別講演では、西本智実氏(指揮者)が「歯科医療と音楽の共振──ヒューマンケアにおける芸術と科学の交差点」と題し講演。バイオリン、チェロ、ソプラノによる演奏を交えつつ、音楽における「共鳴」や「間」の概念を通じて、医療現場における人間理解やチームの調和の重要性を語った。脳科学的視点から、指揮者と演奏者の相互作用や非言語的コミュニケーションの役割を解説し、医療にも通じる「共感と統率のバランス」が治療の質を高めることを示唆した。
続いて日本歯科医学会会長講演として、小林隆太郎氏(日本歯科大学附属病院)が登壇。「歯科界活性化の“チカラ”─2040 歯科イノベーションロードマップ─」と題し、少子高齢化が進むなかでの歯科医療の将来像を提示した。歯科医師の地域偏在や後継者不足といった構造的課題を指摘し、その解決策として地域支援型・多機能型の歯科診療所の整備を提案。さらに、AIによる診断支援や遠隔医療などの技術革新を積極的に取り入れ、歯科医療を社会に開かれた職域として発展させる必要性を強調した。
2日目は、企画講演として、今里 聡氏(大阪大学大学院歯学研究科歯科生体材料学講座)が「グローバルな研究者として活躍するために~プレゼン力・コミュ力アップのtips~」と題して登壇。「接着歯学は日本のお家芸であり、世界をリードしてきた」と述べ、その発展の背景には国際的な発信力とネットワーク形成の努力があったと強調した。また、IADR会長としての経験をふまえ、若手研究者がグローバルに活躍するためには、国際舞台でのプレゼンスの示し方や効果的なネットワーキングを意識し、つねに自己研鑽を続ける姿勢が重要であると語った。
最後に、シンポジウム5「若手歯科医師の挑戦と発信」として、髙江洲雄氏(福岡歯科大学咬合修復学講座冠橋義歯学分野)、南野卓也氏(大阪府開業)、畑山貴志氏(東京科学大学う蝕制御学分野)、柴崎 翔氏(日本大学歯学部保存学教室修復学講座)の4名が登壇。それぞれの講演内では、デジタル技術を応用した臨床報告や最新の研究成果が次々と披露され、会場は活気に包まれた。新たな発想と技術が融合するなか、接着歯学の未来に大きな期待が寄せられる結果となった。
各シンポジウムの最後には活発な質疑応答が交わされ、参加者の関心の高さがうかがえた。終始熱気に包まれた会場は、盛会のうちに幕を閉じた。