2018年2月25日掲載
「歯髄と歯の保存にこだわる」~保存の可能性と長期経過~ のテーマでハイレベルな講演が展開される
北九州歯学研究会 第42回発表会開催
立和名会長(福岡県開業)が開会の辞を述べたあと、講演は新入会員発表から始まった。まず、発表1では青木隆宜氏(福岡県開業)が「歯内療法への取り組み」と題し、根管拡大やエンド三角を中心に動画を交えて自身のエンド治療の実際を述べた。続く発表2では力丸哲也哉氏(福岡県開業)が登壇。「患者に信頼されるホームデンティストを目指して」のタイトルで、通院が途絶えがちな患者への対応などを症例ベースで語り、力丸氏の誠実な人柄が垣間見える講演となった。
次に、本会のメインセッションとなるリレー発表が行われた。リレー発表1「歯髄を守る」では甲斐康晴氏(福岡県開業)がモデレーターを務め、中野宏俊氏(福岡県開業)、津覇雄三氏(福岡県開業)、松延允資氏(福岡県開業)が登壇し、おもに露髄が認められた場合の露髄面のサイズ、止血の状態などを総合的に判断し、適切な術式あるいは材料を用いる際の、臨床家を悩ませている材料選択について代わる代わる講演した。各演者の歯髄保存療法における現在の取り組みと考え方が述べられ、会場との活発な意見交換も行われた。
昼食を挟み、午後からのリレー発表2「残根を救う」では樋口 惣氏(福岡県開業)がモデレーターとなり、大村祐進氏(山口県開業)、田中憲一氏(福岡県開業)、松木良介氏(福岡県開業)が登壇した。ここでは、インプラントによる欠損修復治療の高い予知性が示されている昨今、残根のような予後が疑わしい歯が安易に抜歯されている現状のアンチテーゼとして、歯内療法、歯周治療、修復処置など、基本的な治療を正確に積み重ねることによって一見保存が難しいと思われるような残根でも救えることを示すセッションとなった。特に、大村氏の症例では生物学的幅径にスポットを当て、挺出、歯冠長延長術、その後の補綴という一連の治療を通して、接合上皮と結合組織が付着できる場を歯面に提供することが歯科医師の行うべき仕事とし、大きな反響を呼んだ。
最後の会員総括発表では、上野道生氏(福岡県開業)が「経過観察から診えてきたこと ―歯の保存の可能性―」と題し、北九州歯学研究会に入会してからの35年を振り返り、自身が数多く経験した「失活歯の成れの果て」を診て、あらためて歯髄保存の重要性を痛感したとし、十分な時間をかけて歯髄を残す可能性を模索するようになったと結んだ。30年を超える長期の症例なども供覧し、若手歯科医師には特に示唆に富んだ内容となった。
全プログラムを通して、歯の保存にこだわり、エンド、ペリオ、咬合など歯が長期にわたり機能するための基本事項を突きつめていくことを探求し続けてきた同会の面目躍如となる"らしい"発表会となった。
なお、第43回発表会は、きたる2019年2月24日(日)に同ホールで行われる予定である。