2023年12月17日掲載
長期に安定する良好な治療結果を目指し発足
矯正歯科長期安定研究会(LTSOA)第1回大会開催
本大会では7題の会員講演、1題の教育講演が行われた。そのうち、小平安彦氏(栃木県開業)の「長期経過症例が教えてくれること―当院の20年間を振り返って―」では、舌側矯正装置にて治療を行った症例が供覧された。舌側矯正治療も適切なルートコントロールを行うことで唇側矯正治療と安定度に差はないと考えるが、そのためには緻密な治療計画が必須条件であり、保定期間は変化を三次元的に把握し、何が起こったのかを検証して今後の治療にフィードバックする必要性があると述べた。
西井 康氏(東歯大教授)による教育講演「Ⅱ級外科症例の安定性について 短期、長期リテンションと不安定要因」では、Ⅱ級外科症例の特徴、治療計画、その安定性について文献と、みずからの講座における研究をもとに解説した。また、文献から後戻りが起こりやすい要因についても述べ、特に氏らによる研究からハイアングル傾向の患者ほど後戻りが大きいことが示された。そして治療計画の要点、内側翼突筋の影響、同大学で2 jaw surgeryに採用しているShort split法について詳解された。
有本博英氏(大阪府開業)による講演「長期安定のための矯正治療ゴール設定は可能か?」では、矯正歯科治療における後戻りのファクターを「元に戻ろうとする力」「力学的バランス」「加齢変化」とし、それぞれ分けて考えるべきではないかという意見を提示した。そして、それぞれのファクターについて文献と自身の臨床経験から検証し、対処方法について考察を述べた。
高橋 治氏(東京都開業)による「矯正歯科治療とMFTの効果的な連携 ―機能と形態の長期安定を目指して―」では、まず歯列の長期安定性を得る鍵として、正しい形態、正しい機能、歯の存在限界内への排列が挙げられた。そしてこの歯列の長期安定性を得るために、氏が長年重視し取り組んでいるMFTの臨床的メソッドについて動画を交えて解説した。咀嚼・嚥下・発音・呼吸・姿勢について改善を図るMFTであるが、そのゴールの1つである日常生活のなかで自然な動作としてできる習慣化が重要とした。
次回の第2回研究会は、きたる2024年12月15日(日)にアキバプラザ(東京都)において開催予定である。