企業|2025年5月13日掲載
ダン・エリクソン氏による来日講演に300名以上が参集
株式会社オーラルケア、特別講演会を開催
さる5月11日(日)、TODA HALL & CONFERENCE TOKYO(東京都)において、特別講演会「改めて考えよう。『予防歯科』とは何か? ―予防歯科の理念と口腔の健康を支える歯科医院づくり―」(株式会社オーラルケア主催)が開催された。本講演は、日本に予防歯科の概念が導入されてから約40年を迎えるいま、その原点をあらためて見つめ直すことを目的に企画されたものである。講師には、スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座の上級教授であり、国際的な予防歯科の第一人者であるダン・エリクソン氏を招聘。300名を超える参加者で盛況となった。
開会の辞では、大竹琢也氏(株式会社オーラルケア代表取締役社長)が、「予防の理念を深く見つめるには、“患者さんがどうあるべきか”を、われわれ自身が問い直す必要がある」と語り、世代交代後も“本当の予防”を日本に根づかせるという決意のもと、今回の講演実現に至った経緯を述べた。
講演は、「なぜスウェーデンは歯科疾患の予防に成功したのか?」「口腔疾患を予防するとはどういうことか?」という2つの主題を軸に展開。日本とスウェーデンにおけるう蝕の疫学的差異をはじめ、リスク評価、フッ化物応用、患者との関係性、制度的支援まで、多角的に“予防”の本質が語られた。
前半では、スウェーデンの国民口腔保健戦略の歴史と制度的背景が紹介された。社会全体としての予防への合意形成、保険制度や教育体制、フッ化物の活用、さらには国民の医療に対する信頼が、長期的にう蝕予防に寄与してきたことが明らかにされた。エリクソン氏は、「修復処置は病気を止める手段ではなく、場合によっては新たなリスクを生む」と指摘。最小限の介入(Minimal Intervention)を基本とした診療の重要性を強調した。また、う蝕の進行速度やリスク評価に基づいた介入のタイミング、日本における高濃度フッ化物配合歯磨剤(5,000ppm)の必要性についても言及した。
後半では、医療者と患者の関係性、知識の伝達、行動変容支援に焦点が置かれた。修復処置にともなう医原性損傷や予後の不確実性を前提とし、「う蝕の進行を止める最良の手段は、充填ではなく行動変容を支援することである」と強調した。さらに、Q&Aセッションでは、予防に関心のない患者へのアプローチ法や、フッ化物応用に関する具体的な質問が相次ぎ、現場での実践に即した助言が続いた。エリクソン氏は「“信頼できる相手”になることが、予防の第一歩だ」と語り、多くの参加者が熱心にメモを取る姿が印象的だった。
予防歯科の“理念”と“実践”を再確認する機会となり、多くの歯科衛生士や歯科医師にとって、明日からの診療に活かせる視点が得られた1日となった。