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企業|2025年5月13日掲載

「患者を継続的な歯科受診に繋げるための新たな視点 ~小児期へのアプローチ~」をテーマに

ライオン歯科衛生研究所、「口腔機能発達不全症」についての予防歯科セミナーを開催

ライオン歯科衛生研究所、「口腔機能発達不全症」についての予防歯科セミナーを開催

 さる5月11日(日)、ライオン歯科衛生研究所(濱 逸夫理事長)による予防歯科セミナーが、「患者を継続的な歯科受診に繋げるための新たな視点 ~小児期へのアプローチ~」をテーマにWeb配信にて開催された。主題となったのは、いま小児に増えている「口腔機能発達不全症」への対応で、参加者は約1,800名を数えるほどの盛会となった。

 濱氏の開会挨拶の後、演者3名が講演。その後演者らによるパネルディスカッションが行われ、1日の総括がなされた。

 講演1では、「小児期のこれからの口腔健康管理~口腔衛生と口腔機能育成~」と題して朝田芳信氏(鶴見大学歯学部)が講演。う蝕など器質的疾患への対応(=治療)が第一だった時代から、疾患予防、そして機能的疾患(=口腔機能発達不全症)への対応が重視されるようになった現在への変遷をまとめつつ、ほとんどう蝕のない子どもと重度の子どもに分かれるう蝕の二極化、増加している13歳児以降のう蝕、エナメル質形成不全など、今の小児に見られる口腔の問題を整理した。

 口腔機能発達不全症については、一般の認知度は2割ほどとまだ低いことを指摘。しかし、子どもの食事に関して困りごとのある保護者は8割を超えることから、口腔機能発達不全症を特別な疾患として指導するのではなく、そうした日常の困りごとの延長線上として指導していくのが良いと論じた。たとえば口腔衛生管理のための「歯みがき」も、視点を変えれば、口腔周囲筋のストレッチ、舌への刺激、手・口の協調運動の習熟といった口腔機能の発達を促すものとなることから、「お口みがき」とよぶことを提案した。

 講演2では、「口腔機能発達不全症に取り組むために」と題して、浜野美幸氏(千葉県開業)が講演。いかに口腔の発達不全に気づき、どのように保護者やお子さんに伝え、指導にやる気を出してもらうかを、長年自院で行っている手法をもとに紹介した。

 まず、「お口ぽかん」という言葉は知られているものの、「うちの子のお口ぽかんを治してください」と訴えてくる保護者は少ないと述べ、それゆえお子さんの口元やしゃべりかた、顔貌、発音、待合室での姿勢などを見て、歯科から保護者に声かけすることが「気づく」ために重要だとした。「伝える」際には、「将来の全身の健康にかかわります」などとイメージしにくい未来について話すよりも、「歯並びが悪くなってしまうことがあります」「お顔が面長になってしまうかもしれません」と保護者に想像しやすい懸念を提示するよう助言。また、食事について困りごとはないかを尋ねてから、口腔機能の話へとつなげるのも効果的とされた。

 そしてお子さんに「やる気を出してもらう」には、なんといっても「ほめること」。指導したことをお子さんが少しでもできたのなら、できなかったことよりもできたことに目を向け――たとえば1回でもよい噛み方ができたらそれをほめてあげるようなアプローチが意欲を引き出すという。口腔機能発達不全症は、診断以外は歯科衛生士がかかわれる分野であり、そのためお子さんや保護者により近い立場で接することができる歯科衛生士の役割は大きいと評した。

 講演3では、「食事でうながす口腔機能の発達支援について ~『食べない』の相談に答えるためのポイント~」と題して、藤井葉子氏(広島県勤務、管理栄養士)が講演。歯科医院に勤務する管理栄養士としての視点で、保護者からよくある子どもの食の悩みについて、その例と対応策を解説した。子どもの偏食は、口腔機能の発達が不十分なことが原因となっている例も多い。そうした子にはどのような献立がよいか、どのように食べさせるのがよいかなどを、食物の物性を交えて紹介した。

 最後のパネルディスカッションでは、西沢邦浩氏(株式会社サルタ・プレス代表取締役/日経BP総合研究所メディカル・ヘルスラボ客員研究員)のモデレーターのもと、演者3名がディスカッションを行った。

 なお、本セミナーは後日、ライオン歯科衛生研究所によりオンデマンド配信予定である。

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