社会|2025年11月11日掲載
「Scan the future―デジタルで変わる診療のカタチ―」をテーマに
第17回 STEP Annual Meeting with R and PABCが開催
さる11月9日(日)、パピヨン24ガスホール(福岡県)において、第17回 STEP Annual Meeting with R and PABC(STEP主宰:田中秀樹氏、R主宰:徳永哲彦氏、PABC主宰:安東俊夫氏)が、「Scan the future―デジタルで変わる診療のカタチ―」をテーマに開催された。本発表会では上記テーマの下、「総論」「補綴」「インプラント」「矯正」の4つのパートに分かれ、会員発表が行われた。
「総論」パートでは本発表会実行委員長の荻野真介氏(福岡県開業、STEP)のプランナーのもと、デジタルに関する用語の整理から、歯科臨床における基本的なデジタル技術の概要やその最前線について、「補綴」パートでは古賀弘毅氏(福岡県開業、PABC)のプランナーのもと、デジタル技工のワークフローや補綴修復治療について、「インプラント」パートでは鬼村朋宏氏(宮崎県開業、STEP)のプランナーのもと、上顎前歯部抜歯即時埋入におけるIOSを使用した即時修復治療や臼歯部インプラント治療におけるデジタルガイドシステムの有用性について、「矯正」パートでは山尾康暢氏(福岡県開業、R)のプランナーのもと、アライナー矯正の勘所と今後の展望について講演が行われた。
なかでも桑原 崇氏(佐賀県勤務)による「VRメタバースとスマートグラスを用いたチェアサイドラボサイドコミュニケーション」では、補綴分野において、VRメタバースとスマートグラスを用いて歯科医師と歯科技工士の三次元情報の共有を実現し、従来の二次元情報でのやり取りによる伝達ミスなどを解消するための講演が行われた。桑原氏は、補綴装置製作にあたって歯科医師から歯科技工士に製作を依頼する際、従来では石膏模型、紙面による技工指示、電話での伝達などの過程のなかで細かいニュアンスがうまく伝わらず、認識の齟齬が生じることは少なくないと話した。そこでVRメタバースとスマートグラスを用いることにより、歯科医師と歯科技工士が同じ視点および同時に観察することができ、コミュニケーションの質を「伝達」から「共有」へ転換し、認識の齟齬を可能な限り減らせるようになると述べた。費用などの問題もあり、広く実用されるには少し時間を要するかもしれないが、それでも補綴治療だけでなく、歯科臨床の可能性を示す講演となっていた。
最後に、荻野氏が閉会の辞を述べ、熱気に包まれたまま閉幕した。