萬人一語

歯科医療は「歯」から「口腔」へ

2020年2月号掲載

関連キーワード:

2020年2月号掲載

歯科医療は「歯」から「口腔」へ

 絶えず変革が続く医療政策のなか、現在の日本においては2013年に出された社会保障制度改革国民会議報告書がベースとなり、いわゆるプログラム法案などが出発点となって医療政策が進められている。そして、昨年10月には消費税増税となって一応の予定された工程は終わり、2025年へ向けた次のステップが議論されようとしている。しかしその中であっても、診療報酬改定が今後の医療の方向性を示すことには変わりなく、また今後も公的医療保険がある限り、継続していくものと考える。

 今回の改定において、公表されている予算案の中では今後の歯科医療の変化を感じた点があった。それは「歯」から「口腔」へと移り変わったことだ。

 前回の改定で新たな病名として口腔機能低下症が加えられ、摂食嚥下障害の分野においても歯科医師、歯科衛生士が重要な役割を担っている。歯科医療の中では、従来の歯や歯肉を対象とした器質的な歯科疾患だけでなく、口腔全体がもつ機能にも視点が加わっている。

 歯科の改定率は、プラス0.59%という限られた財源の中で、その流れを点数評価として定まるかが大きなポイントの1つである。加えてフレイルなど口腔機能予防政策の中で、どれだけ歯科が活動可能となる政策が示されるのか。しかし現状では、口腔機能低下症は採算が合わず、方向性は理解しても積極的に推し進めることは難しい。もし財源がないとするならば、口腔機能低下症も自由診療として考えるのか。歯科医師は霞を食って生きていけない。