萬人一語

新聞クイント第300号によせて

2020年12月号掲載

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2020年12月号掲載

新聞クイント第300号によせて

 「新聞クイント」の記念すべき第300号において、「一語」をお贈りする。

 私が本紙に登場する回数は、2012年6月号を皮切りに今回で60回目だそうだ。多い理由は、4年半にわたる日本歯科医学会に所属する分科会の代表者との連載対談である。いつも話が盛り上がり、2時間を超える収録になった。

 2013年から日本歯科医学会会長に専念している私の話は多岐にわたり、しかも歯科界そのものばかりか、それを社会全般から俯瞰するような情報を提供してきたつもりだ。記者が数多くの取材から得てきた現場の声とともに、このような情報も掲載していただいたことをありがたく思っている。また、私の長話にていねいに付き合い、それを限られたスペースに簡潔にまとめていただいた編集手腕にも感謝している。

 いつでもどこでもネットで情報が受け取れる情報過多の時代、書籍も新聞も紙媒体は苦戦していると思うが、それぞれに固定の読者はいるものである。たとえばお茶でも飲みながら新聞を広げるというようなごく日常的な生活の中で、読者が自分なりに情報を咀嚼してさらなる思考を凝らすという大きなメリットがある。情報が瞬時に移り変わるような時にこそ、これは逆に必要であろう。情報の海に身を任せて流されるのはたやすい。しかしその流れがどこに向かうのか、それが自分に合う流れなのかを判断するには、広い視野と心の余裕がほしいものだ。

 紙媒体をこよなく愛する一人の愛読者として、これからもこのスタイルも続けてほしいと願っている。