事業承継を円滑に進めるために現場から生まれたアイデア 編集部：事業承継に関する具体的な取り組みについてご紹介ください。 宮田：前編でお伝えしたように、モリタ（以下、当社）は事業承継に関してトータルでサポートできるような体制を構築しています。 　親子承継の一例として、リニューアルオープンを実施する期間中に院長先生（親）から新しい院長先生（子）に引き継ぐセレモニーのイベントを企画・開催しています。このイベントの目的は、これまで地域の歯科医療を支え貢献してきた院長先生を称える位置づけであり、また...

歯科界の事業承継の現状増加にともなう企業の対応 編集部：20年以上にわたり開業に特化した営業に携わるなかで、近年の開業・承継開業の状況について教えてください。 宮田：モリタ（以下、当社）では、開業・承継支援サイト「One To One Club」（登録無料）を立ち上げ、開業を検討されている先生方にさまざまなサポートを提供しています（図1）。このサイトでは、2017年から2023年の5年間において相談数は約1,200件、そのうち承継相談180件（15％）で、一般の開業相談（お客様相談センターやメー...

「早く行きたければ一人で行け、遠くまで行きたければみんなで行け」 　前編で述べたとおり、最初から順調ではなく、孤独感や挫折感を味わうこともありました。 　勤務開始当時、父とは院長と副院長ではあるものの、親子なのでわかりあえると楽観的に捉えていました。しかし、最高の治療を提供すべく、スタッフに対しても高いレベルをストイックに求める私と、雇用主としての視点で、モチベーションを保たせながら指導する父の方針に乖離があり、父をはじめ、スタッフとも溝ができていくのを感じました。 　そのような状況をなんとか打開...

患者さんを点でみるのではなく、線でみる歯科医療へ 　当院は私の祖父が1936年に台東区に開設し、父が2代目、私が3代目になります（図1）。親戚もほとんど歯科医師ですので、歯科医師という職業に就くことはごく自然な流れでした。 　これまでお世話になってきた先生から、慢性疾患である歯科は、「患者さんを点でみるのではなく線でみることが重要である」と学びました。当院が80年以上も継続できたことは、患者さんの人生に寄り添って歯科医療を提供してきた結果であると理解しています。そして患者さんの治療経過など膨大な資料...

歯科医院継承で事前に確認しておくべきポイント 　後編の内容については、前編に続いて『本当は教えたくない！1億円歯科医院の作り方 経営編』（図1）に詳しく解説していますので、興味・関心のある読者の皆様は、既刊本の開業編とあわせてぜひお読みください。 　継承する歯科医院に対し、事前に確認しておくべき点には、主に以下の3つが挙げられます。 ①歯科医院の立地や経営状態、患者層、スタッフ関係、治療への考え方、診療スタイルの違い、専門（得意）分野などのチェックをする。 ②準備段階として勤務医（可能であれば副...

歯科医院継承の3つのメリットとは 　歯科医院継承は、大きく分けると2つになります。もっとも多いと思われるのが「親子・親族間継承」、そしてもう1つは、親族ではない場合の「第三者継承」です。 　本欄では、親族ではない勤務医だった私が現医療法人を継承した「第三者継承」にまつわる経験談をご紹介したいと思います。 　まず、医院継承のメリットには大きく分けて、①開業にかかる初期費用削減効果②事業の見通しが立ちやすい③患者さんを引き継ぐことができる――の3つが挙げられます。 　継承を行ううえで、個人と法人では...

歯科医師高齢化による後継者不足で閉院や廃院が増加編集部：医院承継を取り巻く現状について教えてください。相田：ヨシダ（以下、弊社）では「医院承継」のサポートを10年以上前から積極的に取り組んでいます。近年は特に後継者不足ということもあり、新規開院よりも閉院や廃院が増加傾向にあります。弊社への問い合わせ件数も非常に多くなってきていることから、歯科界にとって深刻な問題と捉えています。歯科医院軒数はおおよそ68,000軒といわれていますが、今後の閉院や廃院は年約1,500軒で推移することが予想されています。このまま...

岩手県歯が実践する医院継承マッチングフロー 　前編では、医院継承の現状や岩手県歯の取り組みを紹介しました。後編では、医院継承の具体的な流れや実際の継承例について解説します。 　まず、閉院を検討している先生には岩手県歯事務局に閉院届を提出していただきます。閉院に先立ち医院継承を希望する場合、医院継承システム申し込み用紙に詳細情報を記入していただき、県歯事務局は必要情報をホームページに掲載します。この時、ホームページに掲載する情報は個人情報保護の理由から、市区町村単位の地域とおおよそ見込まれる来院患者数...

歯科医師高齢化による継承問題が地域に与える影響 　近年、開業医の高齢化による歯科医院の閉院は、歯科界のなかでも共通の課題として認識が広まりつつあります。そこで今回は、岩手県歯科医師会（以下、岩手県歯）が取り組んでいる歯科医院継承の取り組みについて紹介します。 　われわれ岩手県歯の会員のなかでも、ここ5年前後で閉院する先生が増加してきたと感じています。以前より、死去や体調の悪化により診療が困難になったことでの閉院は見受けられましたが、近年では高齢化が加速している...

歯科医師確保に向けた改革 雇用or派遣の2つの戦略 　前号では、人口減少地域において歯科医師が不足してくることにふれました。現場レベルで対策を施しても現状を打開することは難しいと思いますので、歯科医師会や地方自治体が介入するような、抜本的な改革が必要だと考えています。そこで私は、「市区町村が地域歯科医師会などとの連携のもと、歯科医師を雇用する方法」と「歯科医師会と市区町村が連携し、歯科医師を派遣する方法」の2つのパターンを提案します（図1）。 　前者の市区町...

喫緊の課題である開業医の世代交代 　歯科界として、開業医の高齢化と後継者の不足が特に地方で課題となっている現状はご存じの方も多いのではないでしょうか。日本歯科医師会が満60歳以上の正会員を対象にオンライン資格確認に関して緊急アンケート調査を行った結果、回答者の約20％が「原則義務化に対応困難」と回答しました。なかでももっとも多かった理由が「高齢になり数年後に閉院する予定のため」であったことから、開業医の世代交代が滞っていることは喫緊の課題です。どの地域で調査を行...