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2015年7月4日

第28回一般社団法人日本顎関節学会総会・学術大会/第20回日本口腔顔面痛学会学術大会開催

「現代社会から求められる顎関節疾患・口腔顔面痛への対応」をメインテーマに

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 さる7月4日(土)、5日(日)の2日間、名古屋国際会議場(愛知県)において、第28回一般社団法人日本顎関節学会総会・学術大会(栗田賢一大会長、小林 馨理事長)および第20回日本口腔顔面痛学会学術大会が「現代社会から求められる顎関節疾患・口腔顔面痛への対応」をメインテーマに合同開催された。

 4日(土)はまず、日本口腔顔面痛学会の特別講演として口腔顔面痛治療で世界的に著名なJeffrey Okeson氏の診療パートナーである心理学者Charles Carlson氏の特別講演「Biobehavioral Issues in the Management of Orofacial Pain:Patient Characteristics and Cognitive-Behavioral Interventions for Use in Dental Settings」が行われた。

 また、日本顎関節学会の特別講演も行われ「こころと身体の痛み―痛みの 精神医学・脳科学的側面―」と題して尾崎紀夫氏(名古屋大)が登壇した。尾崎氏は精神科医の立場から「痛み」が脳、身体、心とどのような接点をもつのかについて解説したのち、自閉スペクトラム症、摂食障害と境界性パーソナリティ障害、癌性疼痛を伴ううつ病症例の具体例を症例を挙げて解説した。

 日本顎関節学会のメインシンポジウムは「顎関節脱臼:高齢化社会における対応」と題し、以下の演題、演者により行われた。
1.「高齢者の顎関節脱臼の現状と治療法概要」(柴田考典氏、北海道医療大)
2.「顎関節脱臼の外科療法における戦略とフローチャート」(瀬上夏樹氏、金沢医科大)
3.「高齢者顎関節脱臼に対する観血的および非観血的治療法の将来展望」(栗田賢一氏、愛知学院大)
 講演の中で柴田氏は、超高齢社会によってとくに高齢者や認知症患者に顎関節脱臼が増えていること、なかでも習慣性脱臼が多いこと、すると摂食困難となり誤嚥性肺炎を起こす危険性が高まるとし、観血/非観血的療法のいずれを用いるにしても安全・確実・低侵襲な治療が望まれるとした。

 並行して開催されたシンポジウム「慢性の痛みに対する薬物療法の基礎と臨床」では、口腔顔面痛に対する薬物療法について以下の演題、演者により行われた。
1.限られた薬の選択肢―日米の違い―(安藤彰啓氏、東京都開業)
2.日本における口腔顔面痛に対する薬物療法―現状と展望―(野間 昇氏、日大)
3.口腔顔面痛治療に用いる薬物の薬理学的問題点(笠原正貴氏、東歯大)
 笠原氏のまとめとして、医薬品に副作用のないものはなく、リスクとベネフィットの微妙なバランスで成り立っていること、口腔顔面痛に用いる薬物は中枢神経に作用するものが多く副作用が多いこと、トライアルアンドエラー的な処方は禁忌であることが示唆されていた。

 5日に行われた教育セミナー3「DC/TMD アップデート―most common TMDの診断基準について―」では、築山能大氏(九大)、有馬太郎(北大)が登壇。昨年、国際RDC/TMDコンソーシアムネットワークが全世界に向けて公表した「DC/TMD」(正式な日本語翻訳版は作成中)に基づく顎関節症の診断法を、同ネットワークが提供するモデル症例を基に解説した。

 質疑応答では、暫定案として訳されている日本語に対する疑問点や、DC/TMD活用における問題点などが議論された。なお、日本顎関節学会としては今後、各都道府県歯科医師会等でDC/TMDについての講演を行い、これを普及させたいとの展望も語られていた。

 そのほか、2日間を通じてハンズオンセミナー、イブニングセミナー、オーラルセッション、ポスター発表など多彩な演目が組まれ、会場は大いに賑わった。