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2016年3月26日

九州インプラント研究会(KIRG)30周年記念学術講演会開催

「KIRG30年のインプラント治療から見えてきた新たな展望―新世代への挑戦―」をテーマに

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 さる3月26日(土)、27日(日)の両日、福岡国際会議場(福岡県)において、九州インプラント研究会(KIRG)30周年記念学術講演会(九州インプラント研究会主催、伊東隆利会長)が、460名以上の参加者を集め盛大に開催された。

 本研究会は1985年に故・添島義和氏と末次恒夫氏(九大名誉教授)により設立。以降30年間にわたり、臨床家と研究者が一体になってインプラント治療を学ぶ場として、多くの優秀な臨床医を輩出してきた。

 1日目のシンポジウム1「今求められるインプラント治療の医療安全とは?」では、伊東隆利会長(熊本県開業)が、自院で取り組んでいるインプラント治療のインシデント・アクシデントに対する具体的な予防策に言及した。また、後藤昌昭氏(佐賀大副学長)は、インプラント治療を含めた歯科医療に求められる倫理と法的義務について、具体例を挙げながら解説した。

 シンポジウム2「インプラント周囲炎の基礎と臨床を考察する」では、和泉雄一氏(医歯大教授)がインプラント周囲炎と歯周炎における相違点と類似点を、細菌叢の解析という視点から解説。最新の研究結果を紹介するなどし、おおいに聴講者の関心を引いた。次に児玉利朗氏(神歯大教授)は、インプラント周囲炎・粘膜炎と周囲軟組織の関係性について言及。また非外科的処置、とくにSPTの有効性について詳説した。続いて松井孝道氏(宮崎県開業)は、自身が取り組んできたインプラント周囲炎に対する治療法、とくにβ-TCPエア・アブレイジョンの有効性とポイントを述べた。また、経年的にインプラント体表面のチタンの腐食に対して今後さらに注視すべきとの警鐘を鳴らした。

 シンポジウム3「インプラント最新技術の検証」では、加来敏男氏(大分県開業)が、ガイデッドサージェリーおよびトータルソリューションを用いたインプラント治療の現状と展望を解説した。また、西村正宏氏(鹿児島大教授)は、現在世界で応用されているさまざまな骨補填材料、成長因子の特徴を説明するとともに、幹細胞治療など新たな再生療法の展望に触れた。さらに飯島俊一氏(千葉県開業)は、自身が開発し、応用してきたITインプラントの特徴と適応時の要点について解説した。

 2日目のシンポジウム4「25年経過したインプラント症例から見えてきたもの」では、本研究会が昨年実施した長期症例患者に対する調査およびアンケートの結果をもとに発表が行われた。まずは、座長も務めた澤瀬 隆氏(長崎大教授)が登壇し、臨床研究および統計調査の基礎について概説した。続いて堀川 正氏(熊本県開業)は、本会が調査した25年経過インプラント症例の生物学的併発症(インプラント周囲炎など)について、添島義樹氏(熊本県開業)は補綴関連の併発症(上部構造の変更など)について、それぞれ解説した。さらに、森永 太氏(佐賀県開業)は、同じく本会が調査した20年経過した高齢者のインプラント症例の状況について、各種データとともに解説・分析を行った。

 Next Generation Sessionでは、土屋嘉都彦氏(大分県開業)がインプラントの補綴的併発症について、原 俊浩氏(東京都開業)が上顎臼歯部におけるショートインプラントの応用について、佐藤隆太氏(東京都開業)がナローインプラントの応用について、森永大作氏(佐賀県開業)がCT画像診断による上顎洞粘膜肥厚の診断について、それぞれ解説した。

 最後に行われた特別講演では、Daniel Snetivy氏(Thommen Medical AG最高技術責任者・研究開発主任)が登壇。理想とされるインプラントの形状、アバットメントの連結、表面性状などについて、これまでの研究成果を踏まえ詳説した。また、ジルコニアなど新たな材料を用いたインプラントについても、現状の利点・欠点と今後の展望を語った。

 本講演会では、これらメイン会場における各講演・シンポジウムのほかに、歯科衛生士セッション、歯科技工士セッション、模擬ケースプレゼンテーション、ポスター発表などが行われ、それぞれ盛況を博した。

 30年にわたって日本のインプラント治療を牽引してきた本研究会の歴史の重みを感じるとともに、今後ますます発展していくことを予感させる記念学術講演会となった。