2016年10月2日掲載
神歯大槻木病理学・教室開講10周年記念講演会が盛会となる
「唾液腺から新しい健康づくりを考える」開催
第1部の講演会では、杉本昌弘氏(慶應義塾大特任准教授)の座長のもと、まず猿田樹理氏(神歯大准教授)が「唾液腺産生生理活性物質の全身への影響についての研究」と題して登壇。唾液腺から産生される脳由来神経栄養因子BDNFの役割について解説するとともに、今後の展望として、新しい唾液検査の確立、唾液腺のためのサプリメントの開発、質の良い唾液腺の育成の3点を掲げ、それにより国民の全身の健康に寄与したいとまとめた。
つづいて、山本裕子氏(神歯大短期大学部歯科衛生学科講師)が「食事要因による唾液IgAの増加メカニズムの解明と歯科臨床への応用」と題して講演。唾液IgAが抗菌物質として口腔や全身の健康に関与することから、唾液IgAを増加させるための新しい栄養指導のあり方について解説。なかでも、軟消化性糖類の1つであるフラクトオリゴ糖(FOS)などを摂取して効果を示す"プレバイオティクス"について最新論文とともに紹介した。
最後に、槻木氏が「20年先歯科は劇的に発展しているか」と題して登壇。今まで歯科がう蝕や根尖性歯周炎、歯周病などを治療するDentistryとして発展し、国民も歯科医師に治療を求めて医院に来院してきたが、現在ではそれらの疾患はリスクファクターなどの把握により予防可能なものになり、国民は歯科医師にう蝕や歯周病の予防を求めて来院する時代になりつつあると述べた。そして、今後は歯科医院が口腔を起点に全身の健康を増進する"健康センター"として発展していくとしたうえで、国民の健康状態を客観的に把握する"医療"としての唾液検査の普及と、それに基づいた「唾液腺健康医学」を進めていきたいとした。
第2部の懇親会では関係者らが多数出席し、祝辞が述べられ、また10年を振り返るビデオ映像が流れるなど、教室開講10周年を祝って終始盛会であった。