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2016年11月23日

モリタ創業100周年記念シンポジウム開催

「口腔のケアが全身疾患を救う~口腔の健康を生涯守るために「今」すべきこと~」をテーマに

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 さる11月23日(水)、東京国際フォーラム(東京都)において、モリタ創業100周年記念シンポジウム(株式会社モリタ主催、森田晴夫代表取締役社長)が開催され、全国から歯科医師、歯科衛生士ら1,200名以上が参加し盛会となった。

 まず、森田氏より創業100周年を迎えられたことへの感謝の辞を述べるとともに、100周年を新たな出発点として位置づけたいと挨拶し、開幕した。

 ひき続き、今回のシンポジウムにおけるスペシャルトークイベントでも聞き手を務めた川良美佐雄氏(日大松戸歯学部教授)が登壇し、「噛みあわせ/マウスガードとスポーツの関連性」と題して講演。運動時の顎への負荷を説明するとともに、スポーツの際に下顎にかかる力をふまえ、マウスガードの使用を紹介。マウスガードには「外傷予防」と「下顎固定用」の2種類があること、マウスガードは筋力を上げないが、本来もっている筋肉を円滑に動かせるようにすると述べた。

 続いてスペシャルトークのゲストとして、元サッカー女子日本代表の澤 穂希氏が登場。川良氏とともに、スポーツとオーラルケアに関して澤氏個人の経験を盛り込み、トークを展開。現役時代のメインテナンス頻度や、試合前には歯磨きをしていたことなどを紹介。スポーツと歯科のかかわりをふまえて、歯科に要望することとして、現在口腔のケアが選手個人の意識によって差があるため、情報としてその重要性をもっと知らせてほしいと述べた。

 次に、メインシンポジウムが行われ、6名の演者がそれぞれの視点から講演した。まず、座長の河原英雄氏(大分県開業)が登壇し、「健康長寿を支える臨床医の役割~患者さんが満足するデンチャーを作って長寿を楽しんでもらう~」と題し講演。高齢化が加速するなか、噛める義歯やブリッジを製作することで高齢患者の健康やQOLの向上に寄与できると述べたうえで、その実例を動画とともに紹介した。

 続いて、鈴木宏樹氏(福岡県勤務)が、「『食べる。生きる。活きる。』~病院歯科からみえること~」と題して登壇。病院歯科における症例を紹介し、食べることができるとは、楽しみや生きることにつながっているとし、加齢や疾患などで食べることができなくなった口を管理する歯科の重要性を説いた。

 阿部伸一氏(東歯大教授)は、「~全身の健康を維持するために理解したい~口腔の機能解剖学的役割」と題して講演。解剖学の立場から噛む、飲みこむというメカニズムを多くの動画を用いてわかりやすく解説。鼻腔、口腔、咽頭などは別々の空間ではなく、相互に作用を及ぼし合う関係であることや、正しく飲む、噛むことが全身の健康にとって重要であることを述べた。

 和泉雄一氏(医歯大教授)は、「健康寿命延伸のための歯周病管理」と題し、歯周病と全身疾患との関連性、すなわち口腔の健康が全身の健康にもつながっていることを、データとともに解説。今後の歯科医療には、局所的な治療だけでなく、健康寿命を延ばすための歯周病予防・治療が求められるとした。

 林 美加子氏(阪大教授)は、「なぜカリエス・フリー達成が健康長寿に貢献できるのか」と題して講演。う蝕と全身疾患の関連性、なかでもミュータンス菌と脳血管障害との関連などを解説するとともに、これからのう蝕へのアプローチとして、早期発見・長期管理が大切とした。

 飯島勝矢氏(東大教授)は、「より早期からの包括的フレイル予防戦略~新概念『オーラルフレイル』から何を狙うのか~」と題して登壇。医師の立場から、オーラルフレイルという概念を立ち上げた背景を述べ、健康寿命を延ばすためには栄養、運動、社会性といった三位一体が重要であると説いたうえで、オーラルフレイルを国民運動論にしていきたいと述べた。

 最後に演者全員が登壇し、座長である河原氏の進行のもと、それぞれが講演内容のまとめを述べ、口腔の健康が全身の健康と深くかかわりあっていることを確認した。また別フロアではDHシンポジウムも併催され、座長の山本浩正氏(大阪府開業)、歯科衛生士の石原美樹氏(フリーランス)、大住祐子氏(大阪府・貴和会新大阪歯科診療所)、小林明子氏(東京都・小林歯科医院)がそれぞれ講演。満席の会場は熱心な歯科衛生士の熱気に包まれていた。

 本シンポジウムは、創業100周年にふさわしく、これからの歯科医療のあり方を問う、時代をとらえた講演が多く、参加者は「患者の口腔の健康を生涯守るために"今"すべきこと」の答えを見つけたに違いない。