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2020年1月23日

第38回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会開催

「みんなに学ぶ・みんなで学ぶオーラルオンコロジー」をテーマに

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 さる1月23日(木)、24日(金)の両日、一橋大学一橋講堂および学士会館(東京都)において、第38回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会(太田嘉英大会長、桐田忠昭理事長)が開催された。2日間にわたり、シンポジウム4題、公募シンポジウム3題、パネルディスカッション、ビデオセッション、教育講演、特別講演のほか、一般口演やポスター発表、学術セミナーなど、多彩なプログラムが展開された。

 「公募シンポジウム 地域医療に学ぶ、口腔がん検診の実情と展望」では、はじめに座長の片倉 朗氏(東歯大教授)が、2018年に日本口腔外科学会関連医療連携委員会が全国の歯科医師会を対象に行った口腔がん検診の実態調査から、口腔がん検診を行っているのは全国の約4分の1の団体、実施している主体の8割以上は群市区レベル、実施しているところの半分程度はイベント的に開催、要精検者の検診後の紹介先は5割強が決まっているものの、決まっていないところも3割以上あるなど、現状や課題を紹介した。続いて、北海道西胆振地域(榊原典幸氏、室蘭歯科医師会)、東京都港区(岡 和雄氏、港区芝歯科医師会)、神奈川県海老名市(石井良昌氏、海老名市歯科医師会)、神奈川県平塚市(萩原正明氏、平塚歯科医師会)、京都市の洛和会音羽病院(今井裕一郎氏、洛和会音羽病院口腔外科)、大分県(河野辰行氏、大分大助教)における、口腔がん検診の取り組みが報告された。各演者からは、行政との連携による事業化や予算確保、受診者の費用負担、検診の担い手となる歯科医師の研修やスキルアップ、検診実施による結果など、実例をとおして工夫を凝らした取り組みが提示された。また、集団検診の有効性の問題、検診後のフォロー体制、歯科医師の判定精度の向上や人材確保などの課題が指摘された。

 「シンポジウム 口腔がん医療の未来へ向けたAIの活用~医歯工・産学の融合~」では、はじめに「臨床診断」として、多数の口腔粘膜疾患の写真の集積によるディープラーニングの技術を用いた口腔粘膜疾患診断支援AIの研究開発について、平岡慎一郎氏(阪大助教)が紹介した。次に「放射線画像診断」として、口腔がんの頸部リンパ節転移におけるディープラーニングの診断能の検討から、AIの将来的な診断支援の可能性について、有地淑子氏(愛院大准教授)が講演。続いて「病理診断」として、必要な病理画像の学習データの供給や、データの染色の安定性やスキャン時の変動の問題など、さまざまな課題に対し、その克服のために試みられている方策や今後の可能性について、喜友名朝春氏(日本電気株式会社デジタルヘルスケア事業開発室)が詳述した。最後に、李 天鎬氏(阪大サイバーメディアセンター特任准教授)が登壇し、歯学部との合同による歯科系AIプロジェクトの取り組みを紹介するとともに、本分野を担う人材教育において、臨床医とデータに強い技術者との積極的な交流が重要と強調した。

 がんに対する診断や治療技術の進歩は目覚ましく、さらなる発展により、多くの患者に恩恵をもたらすと思われる。そのようななか、口腔がんはステージⅢやⅣの進行がんとして発見されることが少なくないとされるだけに、国民の期待に応えうる歯科関係者の育成が求められるとともに、日ごろの管理や定期的な受診の重要性などを広く啓発し、早期の発見・対応につなげることが必要である。本学会の積極的な取り組みが期待される。