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2020年8月30日

深井保健科学研究所第19回コロキウム

「COVID-19と口腔保健・歯科医療のNew Normal」をテーマに

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 さる8月30日(日)、オンラインミーティングプログラムのZoom上において、深井保健科学研究所第19回コロキウム(深井穫博所長)が「COVID-19と口腔保健・歯科医療のNew Normal」をテーマに開催され、疫学や公衆衛生を専門とする大学関係者、行政関係者、臨床家らが多数参加し盛会となった。

 吉野浩一氏(神奈川県勤務)の司会進行のもと、まず深井氏(埼玉県開業)が開催主旨を説明。「本コロキウムでは口腔と全身との関係および長寿社会における社会保障の観点から、New Public Healthをテーマに議論し政策提言を行ってきた。今回のCOVID-19は口腔分野の公衆衛生上の弱点を露呈するものとなり、それを克服するには短期的な対応と中長期的な対応が必要」としたうえで、「COVID-19 に対する個々の行動と経験を共有し、そこから浮かびあがってくる今後の口腔保健・歯科医療のNew Normalについて考えたい」と述べた。

 今回のコロキウムは、3つのパートに分けられ展開した。まず、「Part 1:COVID-19 Pandemic―その時私はどう行動し、何を考えたのか?」では、医療機関・歯科医療機関の現場から上野尚雄氏(国立がん研究センター中央病院 歯科)、上川克己氏(広島県歯科医師会)、武内博朗氏(神奈川県開業)が講演。各現場での苦労や対応がくわしく紹介された。つづいて、大学・行政・企業の現場から江藤優希氏(厚生労働省医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室)、松山祐輔氏(医歯大)、瀧口徹氏(新潟医療福祉大)がそれぞれ講演。なかでも、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗員・乗客の搬送に係る業務などを担当していた江藤氏からは、当時の状況や今後の歯科口腔保健の推進に向けた課題などが述べられた。

 「Part2:課題別New Normal」では、「世界の歯科保健医療」「歯科医療機関における感染予防」「健康づくりと行動変容」「リモート診療・リモート保健指導」「保健医療システム」におけるNew Normalをテーマに各分野の演者から発表が行われた。なかでも、恒石美登里氏(日本歯科総合研究機構)による「コロナ禍での医療機関の経営状況について」と題した講演では、支払基金データや国保データ、日本歯科医師会会員調査などをもとに、「全国的に4月および5月では件数ベースで約2~3割減少している。都道府県における減少率の差が大きい」と述べたうえで、「今後は、予約間隔をあける、待合室での三密回避、スタンダードプリコーションの徹底などの努力が考慮される診療報酬上の施策の検討も必要であり、歯科訪問診療の受診控えなどへの対応は喫緊の課題である」とまとめた。

 最後に「Part3:提言」として深井氏が登場し、近日中に深井保健科学研究所のホームページ(http://www.fihs.org/)においてコロキウム提言2020「COVID-19 と口腔保健・歯科医療のNew Normal」を掲載予定(9月3日公開予定)であると閉会の辞を述べた。疫学や公衆衛生を専門とする大学関係者、行政関係者、臨床家らが一堂に会し、毎年さまざまな視座から示唆に富んだ議論が交わされる本コロキウム。各講演中も随時チャットにて活発な議論が行われるなど、盛会裏に終了した。