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2021年5月12日

第75回NPO法人日本口腔科学会学術集会開催

「次世代医学のために口腔科学がなすべきこと」をテーマに

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 さる5月12日(水)から14日(金)の3日間、千里阪急ホテル(大阪府)において、第75回NPO法人日本口腔科学会学術集会(阪井丘芳大会長、中村誠司理事長)が開催された。本学会は日本医学会に属する唯一の歯科系の分科会であり、特別講演5題、シンポジウム7題、教育研修会、各種セミナーなどが催された。なお、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、一般演題およびポスター発表については、すべてウェブのみの掲載となった。また、同意を得られた講演は会期後にオンデマンド配信が行われる。

 「シンポジウム  摂食嚥下障害の評価と対応の実際」では、 まず戸原 玄氏(医歯大教授)が摂食嚥下障害患者への対応の実情などについて講演。嚥下機能が復活している人でも胃ろうのまま、逆に食べる機能が低下しているにもかかわらず普通食のままといった、食べる機能と摂取方法があっていないままとなっているケースが少なくないと指摘。対応として、口や喉のリハビリの視点だけでなく、座れるか、立てるか、声を出せるかなどの広い目線をもって早く気づくことで、早期に改善させることができると強調した。

 続いて田中信和氏(阪大助教)が、同じような摂食嚥下障害の症状でも、その上流にある「原因」が異なると、リハビリの成果が同様に得られるとは限らないとし、機能低下の原因疾患などをとらえ、それに応じて適切に対応することが必要と指摘した。

 最後に小谷泰子氏(大阪府開業)が、嚥下診療などに特化した医院を開業する立場から、嚥下臨床は完全な改善(100点)をめざすとハードルが高くかえって成果が得られないこともあるため、嚥下機能の維持あるいは緩やかな悪化をめざし、20点、30点でも確実におさえていくことが大事と述べた。また一人だけでかかえず、関係者やスタッフの協力を得ることや、学会などを通じて仲間を見つけることも重要と語った。

 「シンポジウム  睡眠時無呼吸のOA治療における 歯科タイトレーション」では、はじめに日本睡眠歯科学会理事長の立場から外木守雄氏(日大教授)が、閉塞性睡眠時呼吸障害(OSA)に対する歯科タイトレーション法の必要性について解説。OSA治療の目的は“気道を確保すること”であり、そのために下顎の至適移動量を決める方法の総称が歯科タイトレーションで、これが適切に採られ作製された口腔内装置(OA)が患者にとって使いやすく、治療効果も得られると述べた。また、歯科タイトレーションはいわゆる咬合採得とはまったく異なる概念であり、OA作製における保険制度上の課題も指摘した。

 つぎに開業医の立場から佐々生康宏氏(山口県開業)が、診療風景の動画も交えながら歯科タイトレーションの実際を紹介。下顎を何ミリ出すかという移動量に固執するのではなく、気道確保の観点から呼吸イベントが消失し、かつ疼痛などの併発症状が出現しない最小限の前方移動量での顎位を探していくことが重要と強調した。

 最後に大学人の立場から奥野健太郎氏(大歯大講師)が登壇し、内視鏡による気道閉塞部位の評価や下顎前方移動にともなう気道の開大様相の確認など、睡眠時無呼吸診療における内視鏡検査の高い有効性について詳述した。

 コロナ禍における開催であったが、学会活動を萎縮しないように工夫をこらし、会場内では感染対策として国際空港で採用されている高い安全性を備えた除菌消臭剤MA-T(要時生成型亜塩素酸イオン水溶液)を用いた除菌対応機器を配備した。また、イブニングセミナーにおいて大会長の阪井氏(阪大教授)みずから、ウイルスの不活性化に効果的なMA-Tを用いた口腔ケア用品の開発をテーマに講演を行い、注目を集めていた。さらに、期間中はスタッフ全員の抗原検査や希望者へのPCR検査も実施した。

 次回第76回学術集会は、きたる2022年4月22日(金)から24日(日)の3日間、福岡国際会議場(福岡県)において開催予定となっている。