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2007年5月26日

第28回日本歯内療法学会学術大会広島大会で「Bio-Endodontics」

韓国歯内療法学会とも5回目のジョイントミーティング

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 さる5月26日(土)、27日(日)の両日、広島国際会議場にて第28回日本歯内療法学会学術大会広島大会(大会長:栗原英見広大教授)が韓国歯内療法学会との5回目のジョイントミーティングも兼ねて開催された。今大会のメインテーマには「Bio-Endodontics」が掲げられ、特別講演2題、韓国招待講演、デンツプライ賞受賞講演、シンポジウム、一般口演、ポスター発表、テーブルクリニックなど、盛りだくさんな演題が披露された。
 初日に行われた特別講演1では、まず今年8月にカナダのバンクーバーで行われる7th World Endodontic Congressでチェアマンを務めるDr. Fred Weinstein(British Columbia大臨床教授)が「A New Era in Endodontic Obturation」のタイトルで登壇。ガッタパーチャの歴史から現在の臨床トピックまで、歯内療法を広い視点で見据えた講演となった。つづいて行われた特別講演2はいわゆる非定型歯痛(Atypical Odontalgia:以下、AO)に着目したもので、「痛みシグナル受容の分子機構とその変調」(土肥敏博広大教授)、「非定型歯痛(Atypical Odontalgia):歯髄疾患を模倣する非歯原性歯痛の診断と治療」(井川雅子氏:静岡市立清水病院口腔外科)の2題が披露された。土肥氏から痛みのメカニズムが詳しく示された後、井川氏は臨床の現場の視点から、AOが難症例として遭遇する頻度は意外と高いこと、またAOの鑑別診断ができないと抜髄→抜歯といった誤った治療になりやすいことを示し、まずAOを正しく理解することの重要性を訴える姿が印象的な講演となった。
  2日目にはデンツプライ賞受賞講演「抜髄処置時における根管内細菌検査について」(紅林尚樹氏:神奈川県開業)が行われた。デンツプライ賞は、過去において発表されたすぐれた講演内容を改めて現時点で評価しようというもの。1997年から10回にわたり発表されたチェアーサイド嫌気培養装置についての発表を行った紅林氏が今回の受賞の運びとなった。これまでの研究から導きだされた、より効果的な根管洗浄法から抜髄処置に至るまで、現在の見解も含めた講演は盛況となった。
 メインテーマを踏襲する演題で行われたシンポジウム「バイオ・エンドドンティクスの現状と展望」は5名の演者を招聘し、今大会最大の賑わいとなった。
 歯髄/根尖部は本来無菌であることを前提に、バイオフィルムのさまざまな電顕写真を閲覧しながら、意外にもマイナーな細菌が口腔感染症を引き起こすことを示唆した「歯内/根尖部病巣の生態系-感染の原因となる微生物の集団とそれを取り巻く環境-」(前田伸子鶴見大教授)から始まり、無菌治療の有用性を文献的な考察、臨床例を交えながら説いた「Aseptic Techniqueによる根管治療」(宮下裕志氏:東京都開業)、血管の再生をもとに歯髄再生の試みを紹介した「歯の延命を目指した歯髄幹細胞による象牙質・歯髄の再生」(中島美砂子氏:国立長寿医療センター研究所)、今話題の直接覆髄材MTAのすぐれた生体適合性、封鎖性、抗菌性を示した「MTAとバイオ・エンドドンティクス」(興地隆史新潟大教授)、最後に、歯内療法をよりよく実施するために新天地に開業した際の試行錯誤を紹介した「患者さんの心をつかむ歯内療法」(田口正博氏:東京都開業)まで、文字どおり"生物学的"観点からとらえた講演内容は非常に示唆に富むものとなり、ディスカッションの場では多くの質問、意見が飛び交った。
 なお、一般口演、ポスター発表、テーブルクリニックでは基礎的実験・研究結果からhow to、勘どころまでが網羅された幅広い内容が披露されたが、とくに一般口演、ポスター発表の一部、Dr. Seung-Jong Lee(Yonsei大教授)を招聘した韓国招待講演、特別講演1では公用語として英語が用いられ、ジョイントミーティングとして、またinternationalな側面をもたせた学会への発展を意図したものがうかがえる大会となった。