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2021年9月12日

日本臨床歯科学会東京支部、Tokyo SJCD Technician Meeting “Webinar”を開催

経験豊富な歯科医師、歯科技工士らによる講演により学びを深めた

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 さる9月12日(日)、Tokyo SJCD Technician Meeting “Webinar”(日本臨床歯科学会東京支部主催、大河雅之会長)がWeb配信にて開催された。本ミーティングは、日本臨床歯科学会(Society of Japan Clinical Dentistry〔SJCD〕、山崎長郎理事長)の東京支部が例年秋に開催している、同支部所属の歯科技工士のための発表と学びの場。昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響で中止となったが、本年度はWeb開催という形態で復活となった。例年であれば若手歯科技工士の発表の場という側面もある本ミーティングだが、今回は経験豊富な歯科医師、歯科技工士各1名による教育講演的な内容で学びを深めた。以下に、各演題の概要を示す。

1)「公式B.O.P.T.(ボプト)コンセプト」(鈴木久史氏、東京都開業)
 本演題では、B.O.P.T.(Biologically Oriented Preparation Technique)の提唱者であるDr. Ignazio Loi(歯科医師・イタリア開業)のもとに頻回に赴き、その上でDr. Loiの承認を受けた「公式B.O.P.T.」のスタディグループである「B.O.P.T. Japan」を設立・主宰する鈴木氏が登壇。歯周外科処置なしに、独特な筒状の支台歯形態とプロビジョナルレストレーション・ファイナルレストレーションへの棚状のカントゥア付与によって歯肉形態を誘導・安定させる本術式にはさまざまな留意点が存在するが、今回は(1)形態と歯肉誘導、(2)適応範囲、(3)(B.O.P.T.に関する)誤解、の3点に絞って解説した。

(1)では、B.O.P.T.の支台歯形成は通法のようにフィニッシュラインを設定するものではなく、歯肉の形を決定づける歯牙の豊隆を完全に取り去る(筒状の形態とする)ことが目的である点や、そのうえで棚状のカントゥアをもつプロビジョナルレストレーションを装着・調整して歯肉形態を誘導するまでの流れなどが示された。また(2)では、クラウンに限定されると思われがちなB.O.P.T.の適応範囲について、ラミネートベニア、Ⅴ級コンポジットレジン修復、破折歯への対応、そしてインプラントにも応用が可能であるとし、その実例を示した。そして(3)では、「B.O.P.T.」という名称に「Preparation Technique」が含まれることで、B.O.P.T.が単なる支台歯形成のテクニックであると思われてしまう誤解、通法で製作したプロビジョナルレストレーションやファイナルレストレーションを装着できると思ってしまう誤解(B.O.P.T.のコンセプトに応じたカントゥアが必要)、またDr. Loiがほとんど文献を著さないことやイタリア語のみを用いることから生じる、情報不足による誤解の3点を挙げ、注意を促した。また、講演を通じて、このB.O.P.T.に適したカントゥアを得るためには歯科技工士にも歯肉のコンディションや回復量を読むスキルが必要であることや、歯科医師と連携していくことがたいへん重要であることも訴えた。

2)「Something like the All-on-4 ~Tissue areaを考慮したセラミック修復~」(志田和浩氏、株式会社PREF)
 本演題では、インプラント補綴、なかでもDr. Paulo Maló(歯科医師・ポルトガル開業)が提唱した、4本のインプラント体でフルアーチの補綴装置を支持するAll-on-4術式にまつわる講演・執筆の機会が多い歯科技工士の志田氏が登壇。演題の由来は、Dr. MalóがフルジルコニアフレームのAll-on-4を認めていないなか、志田氏はこれを積極的に用いるために「Something like~」としたとのこと。

 講演では、長い経験に基づくエピソードや症例を次々に提示。インプラントを埋入することは二度と戻れない「Point of no return」であること、診断用ワックスアップを経ずにインプラント埋入が行われてしまう例があること、みずからの口腔内にもインプラントが埋入されていることによる実感(カントゥアによる清掃性の違いなど)、ジルコニアの生体親和性の高さや研磨における注意点、最初の印象採得で完成まで進むのではなくベリフィケーションジグを用いることの重要性、余剰セメントの観点からみたスクリューリテインの優位性、そしてジルコニア製インプラント上部構造において生じる問題を作業中、装着中および直後、装着後数日、1~3か月、1年以上という5つの期間に分け、それぞれに想定される原因についての考察を行った。

 さらに締めくくりとして、演題にも含まれる「Tissue area」、すなわちAll-on-4ブリッジで広い面積を占める粘膜との接触部の形態に関する考え方を示し、浅いオベイト形態を与えること、できるだけ凸面と骨頂の位置が合うようにすること、できるだけ狭い面積で接触させること、そして接触面はジルコニアあるいはポーセレンとするといった要諦が示された。

 なお、当日は講演ごとに活発なディスカッションも行われ、終始熱気に包まれたまま幕を閉じた。