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2021年9月23日

第24回日本歯科医学会学術大会がWeb配信にて開催

「逆転の発想歯科界2040年への挑戦」をテーマに

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 さる9月23日(木)から25日(土)の3日間、第24回日本歯科医学会学術大会(日本歯科医師会、日本歯科医学会主催)が「逆転の発想歯科界2040年への挑戦」をテーマにWeb配信にて開催された。昨年から猛威を奮う新型コロナウイルスの収束がいまだみえない社会情勢から、感染防止対策への関心の高まりや超高齢社会における国民の健康増進に貢献する歯科医療の役割がうたわれるなか、歯科医療関係者が一堂に集い4年に一度開催される本学術大会が、国内外の第一線で活躍する演者を多数迎え、講演やシンポジウム、公開フォーラム、ポスターセッションなど、ボリューム満点の内容にて繰り広げられた。

 23日(木)には、モデレーターに本学術大会会頭の住友雅人氏(日本歯科医学会会長)、藤井一維氏(日歯大学長)を迎え公開フォーラム「ダブルキャリアのすゝめ ~より楽しい歯科の世界を目指そう~」が行われた。本公開フォーラムでは、歯科医師として働きながら別の道でも活動している方々より、それぞれの視点からダブルキャリアについてふれられた。小説家、僧侶、落語家、シャンソン歌手など、多種多様な職種を掛け持ちする歯科医師から自身の活動について語られ、「お客さん(患者さん)の幸せにつながる、人を喜ばせることができる仕事」という共通点が挙げられた。

 また、「ダブルキャリアを希望する若者になんとアドバイスするか?」という質問に出演者らは、「歌手も小説家もその道のプロになることは非常に難しいこと」という現実を告げつつも、やらない後悔よりもやって後悔すべきとの考えを述べ、「たとえうまくいかなかったとしても失うものは少なく、やっている間は充実した人生が送れる」、「6年間勉強を頑張る過程でもう一方の夢を叶える忍耐力は備わっており情熱だけは忘れないでほしい」と経験者ならではの意見が述べられた。

 午後は松村真宏氏(阪大大学院経済学研究科教授)を講師に招き開会講演2「仕掛学~人を動かすアイデアのつくり方~」が行われた。まず、座長の天野敦雄氏(阪大大学院予防歯科学教室教授)より仕掛学について、人の遊び心を利用し、人の好ましくない行動を変える学問と紹介された。

 その後、松村氏の講演では、冒頭「ごみのポイ捨て禁止!」と書かれている看板の周りに大量のごみが捨てられているスライドを供覧。実は、看板設置後これまで以上にごみが増えてしまったと情報を追加し、「人間自分が後ろめたいことをしている時に正論を言われると言い返してしまうのが一般的であり、今回の事例でいえば、多くの人がごみを捨てている場所にごみを捨ててしまうことにつながった」と解説。仕掛学は正論ではなく対象者が興味をもってくれそうな切り口をうまく探し出し利用するアプローチをとっている、と今回の事例と仕掛学を紐づけた。

 その後も、たばこの吸い殻でプロ野球チームの優勝予想投票、ごみ箱にバスケットゴールの設置などその他多数の仕掛学を用いた問題解決例を紹介。氏は「仕掛学を利用することで歯科イノベーションに貢献できるような行動を誘発させることができるのではないか」と投げかけた。

 次に、住友氏による会頭講演「歯科界を更なる高みへ」が行われた。住友氏は冒頭、フランスの詩人で小説家でもあった評論家のポール・ヴァレリーの言葉を紹介。「湖で浮かべたボートを漕ぐように人は後ろ向きに未来へ入り、目に映るのは過去の風景ばかり」の言葉を引用し、「歯科界は多くの人材とデータをもっており、それぞれが歯科界のボートの漕ぎ手とコックス(舵取りのポジション)の役割を担い、未来の目的へ向かいましょう」と会頭挨拶を行った。

 また、歯科界2040年への挑戦について言及し、健康寿命延伸に寄与する歯科的手段を医療の中に投入し、社会全体のあらゆる英知と連携し、具体的な成果を示すとした。そして「歯科界は、その目的のために有効な手段の創生に全力を尽くす」と述べ、会頭講演を締めくくった。

 25日(土)には池上 彰氏(ジャーナリスト)が登壇し、公開講演「ニュースから世界をみる」が行われた。氏は、これまで流行してきた感染症と政策の歴史を振り返り、コレラ、ペスト、スペイン風邪などを挙げ、感染症が世界を変えその歴史に多大な影響を与えてきたエピソードが深堀りされた。

 また新型コロナウイルスの蔓延により私たちは歴史的な転換点に立たされていると強調し、歴史は過去のことを学ぶことではなく、「今まさに歴史を創り上げており、未来がどのような世界になるかは私たちの今後の取り組みしだいである」と本講演を総括した。

 なお、本大会は2021年9月26日(日)から10月31日(日)までオンデマンド配信され視聴可能である。