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2022年5月28日

第38回 東北矯正歯科学会学術大会、Web配信にて開催

「過去を知り、未来を拓く」をテーマに

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 さる5月28日(土)、29日(日)の両日、第38回 東北矯正歯科学会学術大会(溝口 到大会長、福井和徳会長)が「過去を知り、未来を拓く」をテーマに開催された。当初は艮陵会館(宮城県)にて対面開催される予定であったが、新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、オンライン・オンデマンド配信での開催となった。

 特別講演1では「骨格性下顎前突症患者の外科的矯正治療における舌の形態・位置・運動変化様相」と題し、森山啓司氏(医歯大教授)が講演した。講演では、歯列形態は舌と頬・口唇との力の平衡によって保たれることから、外科的矯正治療によって口腔容積が変化した際の舌の体積の変化、舌の位置や歯列弓内に収まっているときの舌形態が変化したことによる呼吸の影響に関する研究が数多く紹介された。また、外科的矯正治療ほどの劇的な変化ではなくとも、非外科的矯正治療によっても口腔容積は変化するため、呼吸に与える影響を考慮した矯正歯科治療の必要性が示唆された。

 また特別講演2では「成長期の骨格性不正咬合に対する治療結果の予測」と題し、石川博之氏(福歯大名誉教授)が講演した。成長期患者の不正咬合に対し、通法どおりの治療方法、装置を用いても期待した治療効果が得られないという、矯正歯科医が少なからず臨床で経験する問題について、個人の顎顔面パターンから事前に顎骨の成長特性と治療効果を予測することを目指した研究が解説された。医科、特にがん治療においては個別化医療推進が議論・実践されているが、矯正歯科においてもそうした個別化医療の必要性があることが示された。

 さらに招待講演として上地 潤氏(北海道開業)が「当院における矯正診断と治療計画立案のためのデジタルワークフロー」と題し、大学院在籍中に行った顎変形症ケースにおける3D分析法の研究と、開業後に取り入れたデジタル機器を活用した矯正歯科治療におけるデジタル診断について講演した。特に開業後のデジタル診断については、ブラケット、アライナーという矯正装置のバリエーションも含む複数のプランを立案・提示する症例供覧がなされ、臨床歯科医が明日からの臨床を考えるヒントとなった。

 そのほか認定医委員会インフォメーション、3大学若手シンポジウム、学術展示、症例展示も行われ、全体的に矯正歯科治療による影響の複合的な予測、デジタル機器による分析を活用した演題が多く見られ、今後の矯正歯科治療を示唆する大会となった。