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2022年6月3日

第65回春季日本歯周病学会学術大会が開催

「歯周病学クロニクル-そして我々はどこに向かうのか-」をテーマに

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 さる6月3日(金)、4日(土)の両日、京王プラザホテル(東京都)において、第65回春季日本歯周病学会学術大会(佐藤秀一大会長、小方頼昌理事長)が「歯周病学クロニクル―そして我々はどこに向かうのか―」をテーマに開催され、歯科医師、歯科衛生士ら約1,000名の参加があり、盛会となった。なお、本大会は、きたる2022年6月20日(月)~7月20日(水)の約1か月間、Web配信予定となっている。

 本大会では2日間にわたり、特別講演、シンポジウム、歯科衛生士シンポジウム、一般演題口演、ポスター発表、ランチョンセミナーなど多数のプログラムが組まれた。

 初日のシンポジウム1「歯周病検査のクロニクルと展望」(日本口腔検査学会との共同シンポジウム)では、松坂賢一氏(東歯大教授)、高柴正悟氏(岡山大教授)の座長のもと、高柴氏、福本雅彦氏(日大教授)、三辺正人氏(千葉県開業)がそれぞれ講演。なかでも高柴氏は冒頭、「歯周病(の予防・治療)が健康寿命の延伸の鍵であり、すなわち“未病への鍵”である」としたうえで、歯周病の検査を1)細菌感染、2)炎症、3)組織破壊、4)機能障害の4つの観点から解説。また今後、検査結果を歯科医療機関にとどめるのではなく、患者自身の健康維持に役立てられるようパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の活用を提言した。
 
 特別講演3は、沼部幸博氏(日歯大教授)の座長のもと、塩崎一裕氏(奈良先端科学技術大学院大学学長)による「ノーベル賞で辿る分子生物学クロニクル」が行われた。塩崎氏は、日本で唯一学部のない、大学院のみ大学である奈良先端科学技術大学院大学の特徴を紹介するとともに、氏が分子生物学に興味をもった経緯や自身の研究内容について、さらに歴代のノーベル賞受賞者たちの研究を多数紹介しながら、今後の分子生物学の展望を語った。

 シンポジウム2「インプラント周囲炎のクロニクルと展望」では、辰巳順一氏(朝日大教授)の座長のもと、蓮池 聡氏(日大専任講師)、林 丈一朗氏(明海大教授)、児玉利朗氏(神歯大教授)がそれぞれ講演。なかでも蓮池氏は、“Peri-implantits”という用語が初めて登場した1987年頃から約35年経過した現在においても、いまだに十分なコンセンサスが得られていないインプラント周囲炎について多角的な視点から解説した。

 2日目のシンポジウム3「歯周外科治療のクロニクルと展望」では、佐藤秀一氏(日大教授)の座長のもと、閔 成弘氏(米国・テキサス大)、岩野義弘氏(東京都開業)がそれぞれ講演。閔氏は「硬組織および軟組織欠損に対する新たなティッシュエンジニアリングアプローチ」と題して登壇。根面被覆術のアプローチであるVestibular Incision Subperiosteal Tunnel Access(VISTA)や、閔氏らが研究・開発を進めている新たな骨増生術である“Antibody-Mediated Osseous Regeneration(AMOR)”などが紹介された。岩野氏は、歯周組織再生療法の歴史的変遷について文献を紐解きながら詳細に解説するとともに、最新の治療法を用いた症例を動画も交えながら多数供覧。今後は、歯周組織再生療法のさらなる発展により、再生が難しいとされる水平性骨欠損やクラスⅢの根分岐部病変の改善も期待できると展望を述べた。

 特別講演5では、Dr. Francesco Cairo(イタリア・フローレンス大)が「Current Evidences in Periodontal Regeneration and Periodontal Plastic Surgery」と題し、事前収録されたビデオ録画を配信。歯周組織再生療法や歯周形成外科手術を行った多数の症例を供覧。その後、イタリアとリアルタイムにて中継でつなぎ、会場の参加者からの質問に答えていた。

 認定医・専門医教育講演では、牧草一人氏(京都府開業)が「『基礎』と『臨床』がつながる歯周解剖―歯周外科治療を成功に導くためのキーポイント」と題し講演。演題のとおり、解剖学的知識を中心とした「基礎」と、それをふまえたうえで「臨床」を行う重要性について、組織標本および臨床写真とともにわかりやすく解説。また、歯周外科治療で大切な切開・剥離・縫合のポイントを動画なども交えながら詳細に紹介した。

 最後のプログラムとなった臨床ポスター討論では、現地開催ならではの熱気に包まれた議論が交わされ、2日間の幕が閉じた。なお、次回の第65回秋季学術大会は、きたる9月2日(金)、3日(土)の両日、仙台国際センター(宮城県)において、山田 聡大会長(東北大教授)のもと「世界を先導する歯周病学を目指して」をテーマに開催予定。