2023年1月22日掲載

「義歯はどこまで進歩したか」を大会テーマに

第15回日本義歯ケア学会学術大会開催

第15回日本義歯ケア学会学術大会開催
 さる1月22日(日)、第15回日本義歯ケア学会学術大会(近藤尚知大会長、村田比呂司理事長)が「義歯はどこまで進歩したか」を大会テーマに掲げ、Web配信にて開催された。本学術大会では、理事長講演、2つのシンポジウム、口演発表8題、企業セミナーが行われ、約110名が参加した。

 村田理事長、近藤大会長による開会の挨拶に続いて、木本克彦氏(神歯大教授)の座長のもと行われた理事長講演では、「日本義歯ケア学会の使命とこれから」と題して村田氏が講演。1998年に設立された軟質裏装材研究会に始まる本会の歴史とこれまでの学術大会でどのような研究テーマの発表が行われてきたかを紐解きつつ、「患者の視点に立って義歯を科学する」ことこそが本学会のフィロソフィーであると強調した。また、自身も参画している義歯安定剤や義歯床用リライン材などのISO(国際標準化機構)規格の制定についてや、前理事長の河相安彦氏(日大松戸教授)のもと行われた義歯安定剤に関する多施設臨床研究の成果が紹介された。今後の課題としては、義歯安定剤使用ガイドラインの作成、部分床義歯装着者に対する義歯安定剤の使用に関する臨床研究の実施、他学会や国民へ向けての義歯ケアに関する情報の発信などを挙げた。

 また、 シンポジウム1「インプラントオーバーデンチャーはどこまで進歩したか」では、西村正宏氏(鹿児島大教授)が座長を務め、河相氏と金澤 学氏(東医歯大教授)が登壇。河相氏は「無歯顎の治療法として IOD はどのような意味を持つのか?」と題して、初代米国大統領ジョージ・ワシントンが使用していた総義歯や日本大学松戸歯学部歯学資料室が所蔵する木床義歯等を示しながら、総義歯の形態・設計コンセプトの変遷からインプラントオーバーデンチャー(IOD)の出現とその背景までを解説した。つづいて、金澤氏が「超高齢社会における IOD の現在と未来」 と題して、IODの新しいソリューションである1-implant overdenture(1-IOD)、ミニインプラントを用いたIOD、 Implant assisted removable partial denture(IARPD)の生存率と患者報告アウトカムをこれまで行われた研究の結果から解説した。加えて、「固定性インプラント補綴装置は、将来のオーバーデンチャーを考慮に入れてデザインされるべきである」とするMuueller 氏ら(ジュネーブ大)が提唱する「Back-off strategy」を紹介。超高齢社会おけるインプラント治療は、患者の将来的な全身状態の悪化や自身でケアが行えなくなることに備えて、オーバーデンチャーを意識した可逆的な治療戦略が必要になってくるとし、欠損補綴の選択肢の1つとしてIODがさらに重要な位置づけとなることを示唆した。

 さらに、シンポジウム2「パーシャルデンチャーはどこまで進歩したか」では、武部 純氏(愛院大教授)が座長を務め、市川哲雄氏(徳島大教授)と谷田部 優氏(東京都開業)が登壇。市川氏は「クラスプデンチャーからノンクラスプ、ノンメタルクラスプへ」と題して、過去から現在までのパーシャルデンチャーの進歩の流れと今後の展望を概説し、またパーシャルデンチャーにおける審美性への配慮についてその方法を整理した。つづいて、谷田部氏が「ノンメタルクラスプデンチャーは部分床義歯の一翼を担えるか」と題して、ノンメタルクラスプデンチャーを設計するうえで配慮すべき点やケネディの分類に応じた設計の勘所などを豊富な臨床経験に基づいて解説した。また、支台歯周囲歯肉の炎症や義歯の緩みなど、ノンメタルクラスプデンチャーを継続使用するうえで問題となる事柄への対応についても紹介した。

 質疑応答では活発な意見交換が行われ、オンラインながら熱気ある大会となった。

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