2024年10月号掲載
明日からのインプラント臨床に活かしたい
【PR】インプラント周囲炎の発症と進展を防ぐ ためのあらゆる対策が盛り込まれた1冊
※本記事は、「新聞クイント 2024年10月号」より抜粋して掲載
小社2024年7月の新刊として『インプラント周囲炎ゼロコンセプト 科学的根拠に基づいた多角的アプローチ』(以下、インプラント周囲炎ゼロコンセプト)が刊行されました。本欄では、岩野義弘氏(東京都開業)に本書の見どころを語っていただきました。 (編集部)
インプラント周囲炎を“ゼロ”にするための治療指針
『インプラント周囲炎ゼロコンセプト』とはセンセーショナルなタイトルである。インプラント周囲炎は、1993年の第1回European Workshop on Periodontology にて、「支持骨の喪失を引き起こすインプラント周囲の炎症性変化」と定義づけられ、その後2017年に、歯周病とインプラント周囲疾患の新分類について話し合われたアメリカ歯周病学会(AAP)/ ヨーロッパ歯周病連盟(EFP)合同ワークショップのワークグループ4にて、初めてその症例定義がなされた。新分類を基にした最新のメタ解析の結果から、その発症率はインプラントレベルで約12.53%、被検者レベルで約19.53% と高いことが報告されており、かつ他の治療法に比べてすぐれている、あるいは有益であるとのコンセンサスを得られた治療法が存在しない疾患であることから、罹患させないことがもっとも重要であるというのが現在の一般的な認識である。
では、どのような点に配慮すればインプラント周囲炎を防げるのであろうか。それにはまずは本書を読むことをお勧めする。本書はまさに、インプラント周囲炎を引き起こさない、“ゼロ”にするためにつくられた書籍だからである。本書には、検査・診断・治療計画の立案から、インプラント埋入手術、補綴装置の装着、メインテナンスに至るまで、すべての臨床ステップにおいてインプラント周囲炎を予防するための方略が示されている。
インプラント周囲炎を惹起する複数の要因とその臨床的対応
以下に本書の内容を具体的に紹介したい。CHAPTER1の第1項において、インプラント周囲炎とはどういうものなのか、そしてその発症を抑えるために何が必要なのかが、AAP/EFP合同ワークショップでのコンセンサスを基に明確に記されている。インプラント周囲炎は細菌感染によって生じる疾患であるが、辺縁骨吸収は細菌感染だけによって生じるのではない。インプラント体自体の要因、インプラント体– アバットメント間の接合による要因、埋入ポジションの不備や硬・軟組織マネジメントにともなう合併症といった術者側の要因、全身疾患や服薬、喫煙やコンプライアンスの不備といった患者側の要因など両者のさまざまな要因によって辺縁骨吸収が生じ、そこに細菌感染が後発することによってインプラント周囲炎が発症する可能性があるのである。
そのうえで第2項以降において、それぞれのリスクが具体的にどういうものであるのか、またそれらを回避するにはどうすればよいか、詳細な術式や考え方が提示されている。リスクが明確になって初めてそのリスクを回避することが可能となるため、項目立てが明快でとても理解しやすい。本章には、さまざまなインプラント、部位や術式における正確なインプラント埋入ポジションと、それを達成するために必要な手技、インプラント周囲炎を回避するための硬・軟組織マネジメントの考え方と実際、インプラント周囲炎を発症させないための咬合マネジメント、さらに正確なインプラント埋入ポジションの獲得と精度の高い補綴装置を装着するためのデジタルプランニングや、インプラント周囲炎に罹患させないための上部構造の形態と、知りたい情報が網羅されており、まずはインプラント周囲炎を回避するための臨床に即した考え方を理解することができる。
非外科治療と外科的再生療法のプロトコル
しかしながらそれでもインプラント周囲炎は完全には避けられない。CHAPTER2には、インプラント周囲炎に罹患してしまった場合における、非外科的治療ならびに外科的再生療法のプロトコルが、臨床例とともに詳述されている。特に再生療法においては、周囲の骨欠損の状態に応じた術式が提示されており、具体的にどのような切開線を引いて、どの範囲まで粘膜弁を剥離、翻転し、どのような材料を用いて、どの手法で縫合すればよいのか、詳細でわかりやすい口腔内写真を用いて臨床ステップごとに示されている。本章だけで現在のインプラント周囲炎治療の潮流を理解することができ、すぐにでも臨床に活かすことが可能である。
さまざまな角度からインプラント周囲炎予防に必要な知識とテクニックを解説
さらにCHAPTER3~5には、抜歯即時埋入ならびに即時荷重、インプラントを含む包括的治療における矯正歯科治療の応用、インプラント周囲のメインテナンス療法と、インプラント周囲炎を回避するためには欠かせないあらゆる情報が掲載されている。低侵襲と審美は現在、患者にもっとも求められるところであるが、インプラント周囲炎の予防とリンクさせるのは難しい。CHAPTER3ではそれらを両立させるために必要な知識とテクニックが詳述されている。また、天然歯とインプラントが混在する複雑なケースにおいては、矯正歯科治療を含む包括的なアプローチが必要となることが多い。CHAPTER 4では病的移動をきたした天然歯を矯正歯科治療によって適正な位置へ移動させ、正しいポジションにインプラントを埋入することによって、天然歯とインプラントとを適正に共存させる包括的治療について解説している。そしてさまざまな条件において適正に埋入、補綴された健康なインプラント周囲組織を長期的に守っていくためのメインテナンスプログラムについて、使用器具や材料も含めてCHAPTER5で紹介されている。巻末には索引も付録されており、何かを調べたいときにパッと手に取って簡単に情報を探し出せる。本書全体をとおして、痒いところに手が届く構成となっている。
繰り返しになるが、本書にはインプラント周囲炎予防のあらゆる情報が包含されている。読者諸氏におかれては、ぜひ本書を熟読して、インプラント周囲炎ゼロコンセプトを体現していただきたい。それがすべての患者利益にかなうものとなろう。
