2018年3月18日掲載
「歯科医療における人材育成 ―歯科技工士の役割と将来展望―」をテーマに
一般社団法人日本歯学系学会協議会、平成29年度シンポジウムを開催

1)「歯科医療における人材育成 ―歯科保健医療の現状と歯科技工士の役割と将来展望―」(堀 義明氏、厚労省医政局歯科保健課)
本演題では、近年の就業歯科技工士の人数が横ばいであると同時に、そこに占める50歳以上の層が増加していることを踏まえ、厚労省としての歯科技工士に向けた取り組みを紹介。具体的な例として、平成27年からの国家試験の全国統一化、平成30年からの教育カリキュラムの単位化(大網化)の2点を挙げた。
2)「デジタル化時代の歯科技工と歯科技工士の将来 ―歯科補綴学の観点から―」(市川哲雄氏、徳島大大学院医歯薬学研究部口腔顎顔面補綴学分野)
本演題では、歯科技工を取り巻く社会環境の変化、補綴学会誌上での議論、今後の歯科技工士に求められる役割、今後の展望・対応の4部に分けて歯科技工士の現状と将来について俯瞰。その上で、歯科技工士は「形態のスペシャリスト」として、今後とも医科における臨床工学技士のような役割を担っていけるとした。
3)「歯科技工における人材育成 ―超高齢社会の中で『健康長寿』に歯科技工がいかに貢献できるか―」(齊木好太郎氏、ラボラトリー オブ プリンシピア)
日本歯科技工学会の前会長をはじめ、歯科技工に関するさまざまな団体で要職を歴任してきた齊木氏は、まず歯科技工学会のこれまでの取り組みについて紹介。その上で、近年の人口動態や要介護高齢者の問題と歯科とのかかわり、ひいてはそこに歯科技工士が貢献できることについて言及。また、咬合の回復には歯科技工士の技術が大きく関与していることについても示した。
4)「歯科技工における人材育成 ―歯科技工士の役割と将来展望―」(木村健二氏、協和デンタル・ラボラトリー)
かねてからIT技術、CAD/CAMを用いた先進的な歯科技工・技工所経営を行ってきたことで知られる木村氏。今回の講演では、デジタル化は歯科技工士の仕事を奪うのではなく、歯科技工士にとって新たな仕事を生み出すことを強調。今後はとにかくコンピュータを扱える「人財」が必要ということで、そのためのスタッフ教育や、実際に行われているデジタルワークフローについて多数の実例とともに示した。
5)「歯科技工士教育の現状とデジタル化による歯科技工の変革」(末瀬一彦氏、日本デジタル歯科学会)
日本デジタル歯科学会(旧称:日本歯科CAD/CAM学会)の設立に深く関与し、また歯科技工教育に関しても永年にわたって貢献してきた末瀬氏は、歯科技工士の社会的な知名度を向上させることの必要性、これからの歯科技工教育に望むこと、デジタル歯科技工の現状と展望などについて述べた上で、日本の匠の技とデジタル技術を融合させ、日本の歯科技工を世界に発信していくことの重要性などについて示した。また、すでに達成度の高まっている「8020」に加え、歯科医師、歯科衛生士、そして歯科技工士が協働して、補綴治療が行われた上での「8028」「9028」を目指すことが今後のキーワードになると述べた。
会場ではそれぞれの演者の熱気ある講演によって予定終了時刻を大幅に超過したものの、多くの聴講者が退席せずに最後まで聴講を続け、この分野に関する関心の高さをうかがわせた。