学会|2024年5月14日掲載

「健康の伸びしろ」をメインテーマに

第73回日本口腔衛生学会学術大会が開催

第73回日本口腔衛生学会学術大会が開催

 さる5月10日(金)から12日(日)までの3日間、トーサイクラシックホール岩手(岩手県民会館、岩手県)において、第73回日本口腔衛生学会学術大会(岸 光男大会長、三宅達郎理事長)が、開催された。「健康の伸びしろ」をメインテーマに据えた本大会には、歯科関係者約600名以上が参集し、盛会となった。

 本会では、特別講演や受賞講演、大会企画シンポジウム、委員会企画シンポジウム、一般企画シンポジウム、イブニングシンポジウムなど3日間にわたり多くのプログラムが実施された。

 なかでも、委員会企画シンポジウム2 「Society5.0時代を担う! 令和の口腔保健教育のあり方」では、尾﨑哲則氏(日大歯学部客員教授)と野口有紀氏(静岡県立大短期大学部教授)の座長のもと、泉 繭依氏(九歯大講師)と伊藤 奏氏(医歯大大学院講師)が登壇。Society5.0時代を見据えた口腔保健教育の取り組みについてそれぞれ講演した。

 はじめに泉氏は、「心理的尺度を活用したSociety5.0の学生教育のあり方」と題し登壇。Society5.0の学生教育では、DXやAIの活用によって個人の学習の柔軟性が高まり、効率的かつ効果的に知識を獲得することが可能になると考えられるが、デジタルの学習環境では、対面での人間関係やコミュニケーションが減少するため、精神的な健康状態の把握が難しく、心理的なサポートが必要な学生を見落としがちになるという。そこで、ストレスに対応する能力を評価するための尺度として、セルフコンパッションとレジリエンスについて紹介した。また、教育課題の1つである、高齢者に対する偏見や差別的態度が医療の質に影響を与える問題について、ASDS(Ageism Scale for Dental Students)で評価した高齢者に対する態度との関連について自身で行った研究を報告した。最後に、学生のコーチングやフィードバックの際にこれらの尺度を活用し、個人の心理的な能力や内面的な態度を客観的に評価し、支援することで、バランスの取れた環境で成長を促すことができるとまとめた。

 次に、伊藤氏は「Society5.0を見据えた口腔保健教育の事例紹介~令和を担う歯科衛生士育成を目指して~」と題し、講演を行った。Society5.0が目指す医療現場では、ITやAIなどの先端技術を活用するとともに、これまで以上に他職種連携しながら広い視野をもって医療を推進することが必要であり、そのためには専門分野だけにとどまらず、他分野も含めた幅広い知識を取得すること、職種間の理解を深めコミュニケーションを取りながら互いに協力することが重要だと述べた。そのうえで、Society5.0を見据えた歯科衛生士教育の一例として、氏が講師を務める東京医科歯科大学が取り組む一例を紹介。教育プログラムやeラーニングを使用した教材、多職種連携教育について詳説し、ITやAIを活用できることに加え、人にしかできないコミュニケーションや知識・体験・価値観を統合し多職種連携を推進していきたいとまとめた。

 なお、次回の第74回学術大会は、きたる2025年5月16日(金)から18日(日)の3日間、朱鷺メッセ・万代島ビル(新潟県)において開催予定。

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