学会|2025年5月12日掲載

「デジタル技術の潮流と革新―デジタル技術は歯科医療を変革したか?―」をテーマに

一般社団法人日本デジタル歯科学会、第16回学術大会を開催

一般社団法人日本デジタル歯科学会、第16回学術大会を開催

 さる5月10日(土)から5月11日(日)の2日間、日本歯科大学生命歯学部(東京都)において、一般社団法人日本デジタル歯科学会第16回学術大会(新谷明一大会長、末瀬一彦理事長)が、「デジタル技術の潮流と革新―デジタル技術は歯科医療を変革したか?―」をテーマに開催された。

 1日目は、大会長講演として「デジタル技術の潮流と革新」と題し、座長の末瀬氏(日本デジタル歯科学会理事長・奈良県歯科医師会会長)のもと、新谷明一氏(日本歯科大学生命歯学部歯科理工学講座)が講演した。

 特別講演では「デジタル技術は歯科医療を変革したか?」をテーマに、「デジタルデンティストリーにおけるフィニッシュラインの重要性」と題し、座長の宮﨑 隆氏(昭和医科大学国際交流センター長)のもと、山﨑長郎氏(東京都開業)が講演した。日本でもいち早く歯科におけるデジタル歯科臨床に取り組んできた自身の豊富な臨床例を供覧し、日常臨床はフルデジタルでどこまでできるのか、ポイントを具体的に解説し、「デジタル化が進みどんなにスムーズかつ精密になろうと、歯科技工士の技術が補綴装置の最終的な仕上がり、機能維持を左右する」と述べた。

 続いて「デジタル技術がもたらす歯科医療の変革」と題し、座長の新谷明喜氏(日本歯科大学生命歯学部)のもと佐々木啓一氏(宮城大学学長、東北大学参与・名誉教授・グリーン未来創造機構顧問)が東北地域で国や自治体とともに推進する産学連携・地方創生事業のあらましと歯科医療の活用の展望を語った。東北大学や宮城大学で進める医療DX化や、海外の実施例を紹介し、日本には高い技術力がありつつ、国際的に普及や活用が遅れていることに警鐘を鳴らした。国内に限らず、他分野とも積極的に連携し、技術を情報でつなぎ、イノベーションを起こすべきとした。

 また、企画講演として、「CAD/CAM 冠の保険導入は歯科医療を変革させたか?」をテーマに、座長の疋田一洋氏(北海道医療大学歯学部口腔機能修復・再建学系デジタル歯科医学分野)のもと、3つの講演が行われた。

 はじめに、「CAD/CAM冠の臨床経過とその現在地」と題し、三浦賞子氏(明海大学歯学部機能保存回復学講座)がCAD/CAM 冠が保険導入された約10年の歴史と変遷を文献的に考察し、これまでに判明した特性やトラブル要因、処置手順や技術進化による改善点をふまえ適応症選択のポイントなどを講演した。

 次に「冠脱離が導いた3 つの意識改革:接着技術、製作と治療、教育」と題し、峯 篤史氏(大阪大学大学院歯学研究科再生歯科補綴学講座)が、保険導入から約10年、臨床経験の蓄積で分かってきた接着の阻害要因と対処法について自身の経験と文献的考察を交えながら講演した。もっとも多い失敗である脱離を分析し、支台歯形態のみが問題ではなく補綴装置の適合性の影響や、冠咬合面の厚さと高さなども関係することを解説し、過剰な支台歯形成は避けるべきであると述べ、装着前後の患者へのコンサルと指導もまた脱離を防ぐのに重要であるとした。

 最後に「PEEK 冠の臨床研究から保険導入と長期経過」と題し、安部倉 仁氏(広島大学歯学部)が取り組んできた臨床研究と、保険導入間もないなかでの長期経過症例によりPEEK冠の特性ゆえに起きるトラブルと他の既存材料との比較検討とともに、脱離しにくく応用範囲の広い本素材の利点を活用するため、今後望まれる改善点を報告した。

 なお、次回学術大会は、きたる2026年5月9日(土)から10日(日)の2日間、グランキューブ大阪(大阪府)において、柏木宏介大会長(大阪歯科大学有歯補綴咬合学講座)のもと開催予定である。

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