学会|2025年7月23日掲載
「温かな知性」をテーマに
日本歯科心身医学会、設立40周年記念総会・学術大会を開催
さる7月19日(土)、20(日)の両日、時事通信ホール(東京都)において、設立40周年記念日本歯科心身医学会総会・学術大会(吉川達也大会長、豊福 明実行委員長、安彦善裕理事長)が「温かな知性」をテーマに開催され、国内外から約130名の参加者を集めた。
大会冒頭、吉川氏(東京都開業)は開会のあいさつにて、設立40周年という記念すべき節目の大会として「心身医療と医療経営に関わる企画を今大会の主題の1つとした。幅広いテーマについて活発な議論が交わされることを期待したい。また若手歯科医師がこの場を通じて学びとモチベーションを得られる機会になれば幸いである」と述べた。
教育セッションでは「非定型歯痛・顔面痛を再考する」のテーマのもと、片桐綾乃氏(大阪大学)と福田謙一氏(東京歯科大学)が講演を行った。片桐氏は「神経損傷や炎症を契機としない口腔顔面痛の発症機序」と題し、近年報告されている閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と口腔顔面痛の関連について、その疼痛のメカニズムを詳解した。続いて福田氏は「非定型歯痛の診断と対応」と題し、症例を用いながら非定型歯痛の診断プロセスを示し、考えられる背景要因を1つ1つていねいに検討することの重要性を語った。両者の発表後には、会場から次々に質問が上がり、「舌痛症とOSAの関連」「小児のOSAと歯科心身症の関連」「フェネストレーションによる歯原性歯痛の検査診断」などについて意見交換がなされた。
また40周年記念特別講演では、脳と免疫に関する研究でイグノーベル賞を受賞した外科医の新見正則氏(東京都開業)が「イグノーベル的センスで磨く経営術~常識をくすぐる発想が、組織や人を動かす~」、地域エコノミストで『デフレの正体』などの著書で知られる藻谷浩介氏(日本総合研究所主席研究員)が「人口成熟の実相と歯科の対応戦略」と題して講演し、それぞれに大会長の意向に合わせ、これからの時代に求められる医院経営術や歯科医療の戦略について語った。また、心身医療と医療経営のテーマについては特別シンポジウム「心身医療を経営する~心身医療は本当に不採算なのか? 十分な医療を提供するための『処方箋』を探る~」でも豊福氏(東京科学大学)、吉川氏、五島史行氏(医師、東海大学)、安田弘之氏(医師、やすだクリニック)、井出広幸氏(医師、大船心療内科)、松平 浩氏(医師、テーラーメイドバックペインクリニック)らが、歯科、医科(耳鼻咽喉科、心療内科、内科、精神科、整形外科)の壁を超えて議論が交わされた。さらに国際連携セッションでは、韓国、ネパール、インドネシア、イタリアから歯科心身医学を実践する歯科医師や研究者らが招かれ、「非定型歯痛」「舌痛症」「口腔灼熱症候群」などに関する各国の臨床研究を紹介し、国際的な視野での知見の共有が行われた。
その他、教育講演、一般演題、ポスター発表など記念大会にふさわしい充実したプログラムが組まれ、盛会のうちに終了した。なお、次回の2026年 第41回学術大会は「美容と審美」をテーマに、宗像源博大会長(昭和医科大学)のもと開催予定である。