萬人一語

歯科医師によるワクチン接種へ協力の意向

2021年5月号掲載

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2021年5月号掲載

歯科医師によるワクチン接種へ協力の意向

 新型コロナウイルス感染症への対応策として、ワクチンの確保に難儀し遅れを生じていたが、医療従事者へのワクチン接種が少しずつ進み、高齢者への接種も始まった。

 そのようななか、ワクチン接種会場での医師や看護師が不足するとの懸念から、海外の事例にならい「歯科医師による接種を認めたらどうか」との報道が散見される。日本ではワクチンの筋肉注射は医行為にあたり、原則的に違法性を阻却しない限り歯科医師は行えない。

 また一方で「歯科医師は口の中の注射しかできない」などと、一部の報道内容に誤解がある。実際には、口腔外科領域の手術や歯科麻酔領域の神経ブロックでは口腔外から局所麻酔が行われ、また静脈内鎮静法による静脈内注射も歯科診療の中で行われている。さらに歯学部教育と臨床研修においても、その教育がなされている。

 日本歯科医師会は、歯科医師が行うワクチン接種の行為を国が特例的に認める措置の実施が前提と考えている。またそのうえで、政府や日本医師会からの要請があれば全面協力するスタンスを変えていないが、現時点(4月9日)では要請はない。

 私は昨年、歯科医師によるPCR検査が具現化する過程に携わった。今回のような歯科医師による医行為を特例的に認める方向であるならば、日本歯科医学会や厚生労働省と連携して準備にあたった経験を活かしたい。たとえワクチン接種まで至らなくても、それらに係る業務について、地域の歯科医師会に対し要請があれば国民のための協力は惜しまない。