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2016年10月16日

第4回3Dアカデミー情報交換会「本当に使えるのか? オーラルスキャナー」開催

約120名の参加者を集める盛況に

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 さる10月16日(日)、AP浜松町(東京都)において、第4回3Dアカデミー情報交換会「本当に使えるのか? オーラルスキャナー」が開催された(3Dアカデミー主催、夏堀礼二会長)。夏堀礼二氏(青森県開業)を中心に、歯科医師および歯科技工士、そして各企業のスタッフを招き、歯科用CAD/CAM、中でも口腔内スキャナーの応用をメインに臨床応用やディスカッションを行ってきた同アカデミー。4回目となる今回の情報交換会には、過去最大の約120名が参集する盛会となった。以下に、各演題の概要を紹介する。

1)「オーラルスキャナーの現状」(夏堀氏)
 開会のあいさつも兼ねて登壇した夏堀氏はまず、Digital Dentistryの歩みについて概観。各種装置・材料の進化について示した上で、同アカデミーでとくに力を入れている口腔内スキャナーについて言及。「模型をスキャンするデスクトップスキャナーも『デジタル』ではあるが、模型製作というアナログの工程を残している。これからも3Dアカデミーでは、口腔内スキャナーによる直接スキャンの可能性を追求していきたい」とした。

2)「CADスキャナーとオーラルスキャナーの現状と可能性」(梅原一浩氏、青森県開業)
 本演題ではまず、デジタルで行えることとして「標準化・ビジュアル化・データ化」の3点を提示。また、「ブラックボックス」をキーワードに、従来の歯科技工で生じる誤差や昨今の口腔内スキャナーおよびバーチャル咬合器で生じる誤差について、原因がわかりにくい部分や、そのことを意識して使いこなすことの重要性について述べた。その上で、「Digital Dentistryに私が求めるのは、先人の経験値の伝達」「今後は、口腔内スキャナーのデータとCT画像のDICOMデータ、そして顎運動を記録したXMLデータの融合に期待したい」とした。

3)「ジルコニアの特性と用途(歯科材料への展開)」(上田邦義氏、東ソー)
 各種ジルコニアブロックの原料となるジルコニアパウダーの生産で多くのシェアを占める東ソー社に所属する上田氏は、メーカーの立場からジルコニアについて解説。とくに、昨今のジルコニアへの透光性付与については、添加物のコントロールや粒径の小径化などが寄与しているとし、また強度と透光度が反比例することについて注意を促した。

4)「CAD/CAMデンチャーは歯科臨床にとってパラダイムシフトとなり得るか?」(杉本敬弘氏、京都府開業)
 杉本氏は冒頭、現在および将来にわたる歯科技工士の減少について述べた上で、歯科医師自らもデジタル化の力をもって歯科技工に取り組む必要性について示した。その上で、とくにインプラントオーバーデンチャーの設計における注意点について解説。義歯床内面にフィメールを設置するためのクリアランスを確保することの重要性について示した。その上で、今後のDigital Dentistryの進化の方向として「ひとつは、手技や情報、経験の不足を埋めること、そしてもうひとつは、診断の精度や治療の完成度をさらに上げる」ことであるとした。

5)「デジタルデンチャーDENTCA SYSTEM」(渡邉祐康氏、熊本県開業)
 本演題では標記のとおり、米国DENTCA社のDENTCA SYSTEM、また同じく米国のAvadent社によるデジタル総義歯製作システムを使用した経験について提示。いずれも専用の印象採得用トレーを用い、咬合高径や顎位までも1つのトレーで採得していることが特徴であるとした。また、試適を行うことができないかわりに、各社とも製作前にシミュレーションした画像を送信してくるとし、その段階である程度形態の修正が可能であることも示した。その上で、「両システムは、こだわりの義歯を作るというよりも、新人でも60点の義歯を製作できるためのシステム。これまでのアナログの義歯にはかなわないが、今後は不正請求の防止といった意味合いもあり、保険診療にも導入されていくのかもしれない」との感想を述べた。

6)岩手医科大学歯学部補綴インプラント学講座による研究発表
6-1)「光学印象を用いた全部床義歯製作」(原 総一郎氏)
 本演題では、光学印象のみで総義歯の印象採得や咬合採得が可能か否かをテーマに、現状での問題点とその解決案について提示。光学印象で粘膜の印象採得は可能か? という点に関しては、課題は残るものの可能である、とした。また咬合採得に関しては、光学印象を基に3Dプリンターで製作した模型上に咬合床を製作して通法どおり採得する方法と、旧義歯を用いてその高径を参考にする方法の2種が現状では考えられるとした。また、設計した総義歯を、多色出力が可能な3Dプリンターで出力した例についても参考として示した。

6-2)「顎堤粘膜に対する光学印象の精度検証」(近藤尚知氏)
 本演題では、前演題で示された粘膜の光学印象の精度について検証。通法による模型と比較した結果、歯槽頂はおおむね良好だが、切歯乳頭や軟口蓋、レトロモラーパッドなどでは精度差やばらつきが大きいことを示した。その上で、光学印象は顎堤そのものの形態を印象採得しているかもしれないが、義歯に必要なボーダーの形態をいかに設計するかが今後の課題であるとした。

6-3)「口腔内スキャナーを使用したインプラント上部構造の経時的観察」(福徳暁宏氏)
 本演題では、インプラント上部構造のプロビジョナルレストレーションの経時的変化を光学印象で追った結果について報告された。ハイブリッドレジン対ゴールドクラウン、ハイブリッドレジン対金銀パラジウム合金製インレー、そしてフルジルコニア対金銀パラジウム合金製全部鋳造冠、といった対向関係で測定したところ、0.01~0.2mmまでの咬耗がみられたとした。これを基に、今後は点だけではなく面についても解析し、材料やブラキシズムの点も考慮した分類づくりができれば、とした。

7)「口腔内3Dスキャナーを用いたGPのための3D矯正」(荒木和彦氏、東京都開業)
 本演題では、荒木氏が行っているCAD/CAM技術を活用した「3Dハイブリッド矯正」について主に解説。3Shape社の矯正治療用ソフトウェアによるセットアップから、拡大床の装着を経てジルコニア製ナノブラケットを用いた舌側矯正に至るステップについて示した。また、このナノブラケットに関しては、歯科技工所との連携のもとで汎用CADソフトウェアのRhinoceros(Robert McNeel & Associates,アプリクラフト)やFUSION 360(オートデスク)を用いて完全カスタムで製作し、歯面との適合性を高めているとのことで、会場の注目を集めていた。

8)「口腔内光学式印象スキャナの臨床的精度と、文献的考察・単冠からフルアーチ」(小池軍平氏、神奈川県開業)
 本演題ではまず、各種スキャナーに関する論文で頻出するものの、正しい意味が理解されにくい「Accuracy(Trueness):正確度」と「Precision:精度」の違いについて解説。正確度は「目標とする値に対してどれだけ近づけているか」であり(繰り返しの精度は問わない)、「精度」は「目標とする値に近いどうかは関係なく、同じ対象を繰り返して測定した際の値が近い値に収束すること」であるとした。その上で、支台歯のスキャンの精度はスキャナーの測定方式(レーザーや干渉縞投影法、など)よりも、支台歯形態により左右されることを示した。また、口腔内スキャナーの主要な方式であるビデオ方式と写真方式に関しては、前者では咬合面の、後者ではマージンや隣接面での誤差が大きくなりがちであり、画像の取得方式によって偏差部位に特異性があることを示した。この他、CAD/CAMセラミック修復の10年以上経過した自験例も多数示した上で、単冠のCAD/CAM修復は臨床的な適合と予知性において問題がないこと、ブリッジに関しては3ユニットまでが望ましいこと(PMMA材料を用いたプロビジョナルレストレーションでは4ユニットまで)、そしてフルアーチに関しては、ソフトウェアおよび口腔内スキャナーの今後の機能向上が求められる、とした。

9)「口腔内スキャナーの精度とCAD/CAM冠のその後……」(末瀬一彦氏、大阪歯科大学歯科審美学室)
 本演題では冒頭、既存の口腔内/ラボ用スキャナーの各種方式について示した上で、「来年度は口腔内スキャナーと3Dプリンターがブレイクする」との展望が示された。また、後半では末瀬氏が行ってきた保険適用CAD/CAM冠の予後調査について紹介。材料別、装着前の内面処理別、装着材料別など、さまざまな角度からCAD/CAM冠の予後について示した。具体的には、2014年の調査では1,178件中の脱離率が9.1%、破折率が1.7%であったとし、その脱離したクラウンの67%に対して内面のサンドブラスト処理が行われておらず、58%に対してはプライマー処理が行われていなかったことについて述べ、装着前の処置が非常に重要になることについて示した。また、支台歯形態による不適合からの脱離も多いとした。

10)「Possibility of Digital Implant Dentistry」(千葉豊和氏、北海道開業)
 本演題では、口腔内/模型用を問わず現行のどのスキャナーを用いたとしても臨床的な精度には影響がないという文献を示した上で、自験例を基に同一症例を口腔内スキャナーと模型用スキャナーでスキャンした例を提示。結果、フィニッシュラインの滑らかさについては模型用スキャナーに一日の長があることを示した。また、CTと口腔内スキャナーを活用したインプラント治療計画および埋入後即時プロビジョナルレストレーションの症例についても示した。

 会場には歯科医師・歯科技工士はもちろん、歯科材料メーカーのスタッフも多数来場しており、まさに「情報交換会」の趣であった。また、展示には各社ともに口腔内スキャナーの実機が持ち込まれており、参加者は各自、心ゆくまで最新の装置を体験していた。