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2018年6月14日

第28回日本顎変形症学会総会・学術大会開催

「顎変形症治療の展望」をテーマに

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 さる6月14日(木)、15日(金)の両日、ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンター(大阪府)において、第28回特定非営利活動法人日本顎変形症学会総会・学術大会(古郷幹彦大会長、小林正治理事長)が、「顎変形症治療の展望 Future prospects of jaw deformity treatment」をテーマに開催された。

 「シンポジウム 睡眠関連呼吸障害 基礎から睡眠外科治療(外科的矯正治療の応用)まで」では、はじめに加藤隆史氏(阪大教授)が「閉塞性睡眠時無呼吸症候群の基礎」と題して、睡眠時の上気道閉塞は多様であり、呼吸機能の個性を考慮した評価の重要性を述べた。次に小児科医の立場から谷池雅子氏(阪大教授)が「小児期における閉塞性睡眠時無呼吸症候群診療上の問題点」と題し、肥満が最大のリスクである成人とは異なり、アデノイド扁桃肥大が最大のリスクである小児の閉塞性睡眠時無呼吸障害(OSA)について、現状過小評価されているのではと指摘。その後の発達に影響を及ぼしうる小児のOSAについて、歯科も含めてエビデンスを蓄積し、課題を克服していくことが必要と強調した。続いて口腔外科の立場から 外木守雄氏(日大教授)が「睡眠外科治療としての顎矯正治療の応用と問題点」と題し、上気道閉塞障害や年齢などに応じた個々の治療戦略や周術期管理の重要性を述べた。最後にYong-Dae Kwon氏(Kyung Hee University)が「OMFS as a Team Player in Multidisciplinary Approach to OSA」と題し、3Dシミュレーションや動画による手術画像などを交えながら、韓国における睡眠外科治療の実際を紹介した。

 「シンポジウム 3D画像技術の展望:3Dシミュレーションの実践と評価」では、まずシミュレーションソフトによる分析とCAD/CAMで作製したスプリントやサージカルガイドを用いた手術の実際として、土生 学氏(九歯大講師)から「軟組織ベースシミュレーションとCAD/CAMスプリントを用いた顎変形症治療の実践とその評価」、Dae-Seok Hwang氏(Pusan National University)から「Practical utility of 3-D simulation and 3-D printed wafer in orthognathic surgery」の講演が行われた。続いては矯正歯科より2名の演者が登壇。西野和臣氏(新潟大医歯学総合病院)が「術後軟組織シミュレーション実現に向けての現状と課題」と題し、術後の軟組織の顔貌変化の予測に対する研究について、大塚雄一郎氏(明海大准教授)が「内側翼突筋の走行と付着を加えた顎矯正手術の3Dシミュレーション」と題し、骨格に加え筋組織の移動の解析も考慮した3Dシミュレーションの実際について報告した。最後に栗原祐史氏(昭和大講師)が「ナビゲーションシステムを用いた顎矯正手術の実践とその評価」と題し、術前のシミュレーションをナビゲーション支援により実際の手術に反映させるための取り組みについて紹介した。

 15日の午前中には次世代を担う若手の先生方に向けて「技術と知識の伝承」と題したビデオセミナーが、口腔外科および矯正歯科に分かれて2つの会場で開催され、エキスパートによる手術手技や外科的矯正治療の実際が動画で供覧され、来場者の注目を集めていた。

 大阪駅近くの会場には、会期中900名を超える多数の参加者が来場し、会場では活発な討議が繰り広げられるなど、参加者の関心の高さがうかがわれた。三次元画像を用いた評価や手術支援など顎変形症治療の進展は目覚ましく、学術研究や人材育成などにおける本学会のさらなる取り組みが期待される。