2018年12月15日掲載

「100年ライフを見据えた歯周・インプラント治療」をテーマに

第25回JIADS総会・学術大会開催

第25回JIADS総会・学術大会開催
 さる12月15日(土)、16日(日)の両日、千里ライフサイエンスセンタービル(大阪府)において第25回JIADS総会・学術大会(瀧野裕行理事長)が「100年ライフを見据えた歯周・インプラント治療」をメインテーマに開催され、歯科医師、歯科衛生士ら約350名が参集し盛会となった。

 1日目の午前は会員発表が行われ、歯科医師5名と歯科衛生士1名が登壇した。以下に演題・演者を示す。

「目的と手段を考えた歯周治療の実践」(鳥井優樹氏、北海道開業)
「垂直性骨欠損を有する臼歯部歯列不正患者に対し行った包括的歯科治療」(青木秀記氏、大阪府開業)
「JIADS Conceptの実践をめざして」(金原大輔氏、東京都開業)
「サージカルガイドを用いて無歯顎患者に対応した症例」(岡本吉史氏、大阪府開業)
「歯周治療を通じて学んだ歯科衛生士の役割」(長谷川春菜氏、歯科衛生士・医療法人惠仁会関根歯科医院)
「歯周組織の温存に配慮して取り組んだ歯周治療の一症例」(吉村研治氏、大分県開業)

 いずれも、症例をもとにJIADSのコンセプトが日々の臨床においてどのように活かされているかが裏付けられる発表となった。

 午後の特別講演では「科学からみた天然歯保存の最前線」と題し、天野敦雄氏と村上伸也氏(いずれも阪大教授)がそれぞれ講演した。天野氏は、歯の主な喪失原因であるう蝕と歯周病の病因論が21世紀になって様変わりしたことを解説。細菌どうしのバランスがとれた“symbiosis”から、そのバランスが崩れる“dysbiosis”へ変化する“microbial shift”などについて、イラストとともにわかりやすく解説した。村上氏は、歯周組織の破壊と再生に関して基礎的な面から解説。効果を判定するのに通常6ヵ月以上を要する再生療法においては、創傷治癒の初期過程を至適に活性化することが大切としたうえで、FGF-2が細胞増殖や血管新生を促進するメカニズムについてくわしく解説した。

 別会場では、企業セミナーも行われ、シャープニング実習から感染管理対策、カウンセリング術と多岐にわたり学べる機会となった。

 2日目の午前に行なわれたDHセッション「患者さんの生涯を考えて歯科衛生士が今できること」では、はじめに小谷洋平氏(大阪府勤務)が登壇し、「JIADSのコンセプトである治療結果の永続性のためには歯科衛生士の力が欠かせない」と強調。それを受け、実際に求められる歯科衛生士の視点・役割について3名の歯科衛生士が講演した。織地捺稀氏(医療法人貴和会 新大阪歯科診療所)はフレイルの概要を中心に解説し、歯科治療を通して要介護を先送りにできた症例を紹介。続いて由良典子氏(大川歯科医院)は、咀嚼機能と認知症の関連性を示したうえで、歯周病の活動性を把握し、個々のリスクと傾向を観察する重要性を説いた。最後に下田裕子氏(水上歯科クリニック)が、8020達成者が増えた一方で高齢者におけるう蝕や歯周病が増加していることに触れ、長期管理のためのモチベーション維持の重要性を主張。OHIでは患者を褒めることに加え、悪いことを伝えることも必要だと結んだ。

 特別講演「科学からみたインプラント保存の最前線」では、和田圭祐氏(米国・ペンシルバニア大学)による「インプラント周囲炎の予防と治療―アメリカ歯周病専門医プログラム教育内容より―」と、辰巳順一氏(明海大准教授)の「インプラント周囲炎:研究から見えてきたインプラント治療の課題」の講演が行われた。

 午後にはDr.DH合同シンポジウム「JIADSからの『100年ライフ』への提言」と題して、水野秀治氏(大阪府勤務)、大住祐子氏(歯科衛生士・医療法人貴和会 新大阪歯科診療所)、中家麻里氏(大阪府開業)、奥田裕司氏(大阪府開業)の4名が登壇。いずれも咀嚼機能の重要性を示したうえで、現症のみならず、口腔内状態、患者の背景など全体の傾向を早期から把握する重要性が説かれた。

 2日間にわたり企業展示も行われ、各会場とも多くの参加者で賑わいをみせていた。

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