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2019年8月3日

第29回九州臨床再生歯科研究会講演会開催

泉 英之氏が「治る歯髄、治らない歯髄 露髄した歯髄の診断と治療」と題して講演

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 さる8月3日(土)、福岡県歯科医師会館(福岡県)において、九州臨床再生歯科研究会(平井友成会長)による第29回講演会が開催され、泉 英之氏(滋賀県開業)が「治る歯髄、治らない歯髄――露髄した歯髄の診断と治療」と題して講演した。

 泉氏はまず、Axellsonらの研究(2004)から抜歯に至る原因の半分以上は歯根破折であること、Caplanらの研究(2005)から根管治療を行った歯の喪失リスクが前歯で1.8倍、臼歯で7.4倍になることを示し、歯を喪失しないためには歯髄を喪失しないことが重要なことを示した。

 露髄した歯髄の診断では、止血できるかどうかだけでは健全歯髄の指標にならないと述べ、露髄して出血がにじみ出るような状態であれば止血はできるが、そのときの根管内の歯髄は、壊死して原型をとどめていない状態なことがあるので、歯髄を水洗して、エアーをあて歯髄の状態を診断することが必要、と述べた。その健全歯髄の診断の指標は、マイクロスコープで露髄部から歯髄を観察したときに「エアブローで歯髄が象牙質から離れない」「歯髄そのものからの出血が認められる」「毛細血管が見える」ことと示し、マイクロスコープを用いた歯髄の視診は、診断精度を上げる、とまとめた。

 つぎに、感染がみられた際の治療では、直接覆髄・部分断髄・歯頚部断髄・抜髄のいずれかを歯髄壊死の範囲に応じて行うが、歯冠部の歯髄まで感染がみられた場合には歯頚部断髄を行うことで、感染を残すリスクは低く、修復後にはマイクロリーケージのリスクが低くなり、歯根部の歯髄を残せる成功率が高い、と述べた。

 また、泉氏は「どの直接覆髄材がよいのか?」「露髄の大きさは予後に影響を与えるのか?」などの問いにも考察を示し、最後に、「歯髄炎の程度」「歯髄の生活度」「マイクロリーケージ」が歯髄保存の可能性にかかわる、と述べて講演をまとめた。