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2019年9月12日

2019年度 明海大学・朝日大学歯学部生涯研修部 創立20周年記念式典を開催

Henry H. Takei氏らが歯科生涯研修の意義と展望を大いに語る

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 さる9月12日(木)、新宿京王プラザホテル(東京都)において、2019年度 明海大学・朝日大学歯学部生涯研修部 創立20周年記念式典が盛大に執り行われた。

 本式典は、明海大学と朝日大学の歯学部が開催している生涯研修事業が今年で20年の節目を迎えたことを記念して催されたものであり、本事業の講師陣、両大学の関係者、歯科業界関係者および来賓などが数多く参集した。

 はじめに、河津 寛氏(東京都開業・明海大歯学部生涯研修部長)が開式の辞として、本生涯研修部の足跡を振り返ったのち、「歯科医師生涯研修事業」と題して以下の事業紹介がなされた。

 まずは安井利一氏(明海大学長)の挨拶に続き、渡辺隆史氏(福島県開業・明海大生涯研修部副部長)が「歯科医師生涯研修の足跡とプログラムの変遷」と題した発表を展開。1999年にわが国初の本格的な生涯教育センターとして本生涯研修部が設置され、米国UCLAとのジョイントプログラム「UCLAベーシックコース・歯周病とインプラント」を開催してから、現在に至るまでの変遷を振り返った。当初5コース20日間のプログラムとしてスタートした本事業は、その後規模を拡大し、現在では、81コース、114日間のプログラムを開催し、2018年までに延べ13,758名の修了者を輩出している。また、国内にとどまらず、現在では台湾に講師を派遣し、外国人歯科医師のための特別コースも展開するようになった。そうした発展の経緯に関する解説に、聴講者は納得の表情で聴き入っていた。

 次に、上濱 正氏(茨城県開業・明海大生涯研修部副部長)が、「歯科総合医について」と題した発表を展開。本事業の方針として、「生涯にわたり高い専門性を保ちつつ、総合医として患者の信頼を得るような高度の総合歯科医師を養成すること」を掲げている旨を述べるととともに、わが国で最初の「歯科総合医」の認定医を制定した経緯を語った。そして、働きながら、臨床をしながら、卒後に研鑽を重ねて本認定医を取得した歯科医師を数多く輩出し、国民から選ばれる歯科医療従事者を育成・支援することが、本事業の目指すところであると説いた。

 続いて、本事業の修了者である2名の歯科総合医が症例発表を展開。伊藤友里子氏(明海大病院)は「補綴前処置としてMTMを行った一症例」、玉置佳嵩氏(神奈川県勤務)は「歯肉退縮部位に結合組織移植を応用し根面被覆術行った一症例」と題した講演をそれぞれ行った。

 式典の後半は、大友克之氏(朝日大学長)の挨拶に続き、Henry H. Takei氏(米国・UCLA特任教授、明海大客員教授)が「米国の生涯研修事業―その現状と未来―」と題した講演を展開。歯科生涯教育が重要な理由として、歯科医師および歯科医療がつねに変化し続けている点を挙げた。そして、とくに先端技術が駆使される現代の歯科医療においては、生涯研修が大きな意味を成すと述べた。すなわち、新しい情報をつねに学び続け、臨床に取り込んで、患者にとってよりよい歯科医療を提供するためには、生涯研修が不可欠である。さらに、歯科生涯教育講座は、すべての歯科大学、大学歯学部の責任である、と熱弁をふるった。

 また、話は歯科界全体にまで及び、基本的な歯科医療に対する適正な診療報酬については、公的ならびに民間保険制度を改革すべきである、との持論を語った。そして、制度の不備や非現実的な診療報酬制度は、診療現場での歯科医療の質の低下を招き、質よりも量が優先されてしまうことへの危惧を説いた。

 さらに、患者の健康上の要請に対して倫理的かつ正直に対応し、専門職としてふさわしい歯科医師を育成するために、歯科教育では、人間的な共感に基づく患者対応の基準を設定すべきである、との見解を述べ、歯科医療は日進月歩で進化を遂げているとしても、患者教育や患者管理のような基本的な技量は不変であることを強調し、講演を結んだ。

 なお、Takei氏は、本年5月に旭日中綬章を受章しており、その栄誉とこれまでの功績に対して、会場から盛大な拍手が送られた。

 式典後の祝賀会では、演者、聴講者が一堂に会し、互いに交流を深めるなど、終始有意義な記念式典となった。