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2020年10月10日

歯周病の新分類迷子の会を開催

新分類について牧草一人氏による持論が展開される

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 さる10月10日(土)、井上 和氏(歯科衛生士)が主宰するセミナー「歯周病の新分類迷子の会」がオンラインミーティングプログラムのZoomで開催され、約80名の参加者が視聴した。アメリカ歯周病学会(AAP)・ヨーロッパ歯周病連盟(EFP)より公表された歯周病の新分類が2021年度より日本歯周病学会でも本格実施されるのを受けて、今回は同学会認定歯周病専門医・指導医である牧草一人氏(京都府開業)が招聘され、講演が行われた。

 牧草氏はまず、新分類の解説に入る前に、ガイドラインの位置づけについて再確認。ガイドラインは診療を縛るものではないものの、診療の「出発点」であるとしたうえで、すべての医療はガイドラインどおりに行われているわけではないが、ガイドラインを読んでいない医療従事者には医療を行う資格はないと主張した。また、日本歯周病学会のガイドラインに掲載されている歯周治療の標準的な進め方は保険請求の流れとも合致していることにもふれ、両者は切っても切れない関係にあると述べた。

 次に、歯周炎の重症度を炎症部分の大きさ(面積)で表す指標であるPISA(Periodontal Inflamed Surface Area)についても紹介。現在ではPISAと全身疾患へのリスクとの関連を調査した臨床研究も数多く報告されており、今後医科歯科連携に役立つのはもちろん、患者にも理解されやすいと評価した。

 その後、本題の新分類について切り込んだ牧草氏は、新たに導入されたステージとグレードについて簡単に解説したうえで、特に注意すべき点として、ステージⅠ・ⅡとⅢ・Ⅳの間には水平性骨吸収か垂直性骨吸収かという明確な違いがあると指摘した。

 さらに、ステージⅣで歯列・咬合にまで言及されるようになったこと、グレードによって全身疾患(糖尿病)や生活習慣(喫煙)なども考慮されるようになったことをふまえて、一人の患者を診るうえでより多くの情報が含まれるようになった点は評価すべき、と主張。そのうえで、病状・病態が異なる1歯単位の診断・治療法の決定には限度があるなど、新分類について懸念される問題点を挙げた。

 最後に、組織破壊の程度と炎症の程度を診るこれまでの1歯単位の分類法をもとに、氏が独自に改良した診断および治療法の選択について披露され、参加者の関心を集めた。なお、詳細は2020年9月に発刊された氏の著書『基礎と臨床がつながる歯周解剖』(クインテッセンス出版刊)でも紹介されているため、参照されたい。