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2021年6月11日

第32回日本老年歯科医学会学術大会、Web配信にて開催

「人生100年時代に老年歯科医学ができること」をテーマに

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 さる6月11日(金)から13日(日)の3日間、第32回日本老年歯科医学会学術大会(河相安彦大会長、水口俊介理事長)が「人生100年時代に老年歯科医学ができること」をテーマにWeb配信にて開催され、1,529名が参加した。上記3日間のWeb配信に加え、6月14日(月)から27日(日)がオンデマンド配信期間となっている。7題のシンポジウムをはじめ、日本老年学会総会合同シンポジウム、特別講演、ポスターセッション、市民公開講座、スポンサードセッションなど多彩なプログラムが用意された。

 特別シンポジウム「人生100 年時代に向けての歯科的ロードマップ」では、河相安彦氏(日大松戸歯学部)、水口俊介氏(医歯大)を座長に、河相安彦氏(日大松戸)、朝田芳信氏(鶴見大)、吉成伸夫氏(松本歯科大)、本川佳子氏、岩崎正則氏(ともに東京都健康長寿医療センター研究所)、池邉一典氏(阪大)らが登壇。はじめに、河相氏が人生100年時代に向けてのロードマップについて、総合的に述べた。朝田氏は、小児期からの歯科的戦略と口腔健康へのアプローチの変遷について述べた。吉成氏は成人期について、ライフコースアプローチと歯周治療への取り組みのかかわりや、先制医療としての歯周病治療について解説した。本川氏は管理栄養士という立場から、疾病・フレイルの予防についてふれ、歯科と栄養とのかかわりについてまとめた。岩崎氏は口腔機能と口腔の健康状態が健康長寿に与える影響と今後の展望について、エビデンスを示すとともに解説した。池邉氏からは超高齢期の歯と口腔機能について解説がなされ、高齢者・超高齢期の歯科的対応についてまとめられた。

 歯科衛生士シンポジウムについては、認知症の患者に対して歯科衛生士はどのようにかかわっていくのかというテーマのもと行われた。以下に演者および講演タイトルを示す。

 「歯科衛生士が口腔健康管理という専門性を通じて認知症の人にできること、そして求められていること」(枝広あや子氏、東京都健康長寿医療センター研究所)
「地域のつながりで認知症高齢者の「望む暮らし」を守れ!」(丸岡三紗氏、歯科衛生士、まんのう町国民健康保険造田歯科診療所)
「認知症の人への歯科衛生士の関わり~口腔健康管理を通して~」(渡辺三恵子氏、歯科衛生士、世田谷区社会福祉事業団芦花ホーム)
「管理栄養士による在宅の食支援~認知症へのアプローチ~」(時岡奈穂子氏、管理栄養士〔特非〕はみんぐ南河内 認定栄養ケア・ステーションからふる)

 特に丸岡氏の講演においては、指定された食べ物以外のものを口にしてしまい、誤嚥性肺炎を発症してしまった90代、要介護5の男性のケースを紹介。好きなものを好きなように食べさせてあげたいという家族の要望から、飲み物だけトロミをつけたものを提供するようにし、口腔機能訓練を行ったところ、発熱はみられなくなったとのこと。現状で良いのかと悩んだケースではあるが、在宅生活に正解はなく、それに対して試行錯誤を行うことが大事なのではないかと述べた。ディスカッションでは、高齢者を診る歯科医師および歯科衛生士から多くの質問が寄せられた。

 いずれのセッションも、講演だけでなく、質疑の時間まで熱気に包まれ、老年歯科に対する歯科関係者の関心の高さを感じることができた。

 なお、次回開催となる第33回日本老年歯科医学会学術大会は、きたる2022年6月10日(金)から12日(日)にかけて、新潟県市民文化会館りゅーとぴあ(新潟県)において開催予定である。