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2021年10月15日

日本歯周病学会、第64回秋季学術大会を開催

「歯周治療で美味しい人生をサポート」をテーマに

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 さる10月15日(金)、16日(土)の両日、名古屋国際会議場(愛知県)において、第64回秋季日本歯周病学会学術大会(三谷章雄大会長、小方頼昌理事長)が開催された。参加登録者数は4,100名以上(後日のWeb配信の登録者数は含まず)、現地来場者数は700名以上の盛会となった。

 本大会のテーマは「歯周治療で美味しい人生をサポート」。三谷大会長によると、患者さんにとって「食事」と「健康な人生」を楽しむという二重の旨みを得ることができるのが歯周治療であり、それを表現したのがこのテーマとのこと。テーマに則り、歯周病学にくわえ免疫学、細菌学、再生医療、医歯薬連携(歯周医学)、IoT、AI開発など多様な分野の講演が目白押しであった。

 1日目は、歯周病学の講演をメインに構成されていた。午前に行われたシンポジウムⅠでは、辰巳順一氏(朝日大教授)の座長のもと、和田誠大氏(阪大大学院准教授)による「歯周炎罹患患者に対する可撤性義歯治療―残存歯の保護と口腔機能回復の両立―」、荻野洋一郎氏(九大大学院准教授)による「固定性補綴装置による口腔機能回復治療:1歯単位、1口腔単位での注意事項」、上野大輔氏(広島県勤務)による「予知性の高いインプラント治療の実践」の講演が行われた。各専門の立場から、歯周病患者に対する補綴治療で留意すべき点などが紹介された。

 続く午後の特別講演1では、将棋AIプログラム「Ponanza」の開発者である山本一成氏(愛院大特任教授)が「人工知能はどのようにして『名人』を超えたのか」の演題で講演。PonanzaのAIはいまでこそ数々の名人を破るレベルだが、開発当初はアマチュアにも勝てない性能であった。それが、将棋の打ち筋を記憶させるのではなく、AI同士で対局を数千回単位で繰り返させることで強くなっていったという。氏は、開発にブレイクスルーをもたらしたそうした発想の転換を述べる一方、敗れた名人たちが見せた、AIのある環境への順応の速さにも着目。Ponanza への将棋界の反応は、今後AIが浸透していく社会の縮図となると述べた。

 2日目は、審美治療にくわえ加熱式タバコや糖尿病、根面う蝕に関する講演のほか、DX(デジタルトランスフォーメーション:進化したデジタル技術による生活の変革)を目的とした歯科の最新技術が披露された。

 午前の特別講演2では、小方頼昌氏(日大松戸教授)の座長のもと、瀧野裕行氏(京都府開業)が「審美領域における難症例攻略のキーポイント」の演題で講演。歯周形成外科や再生療法の難症例を複数挙げ、それらにEMDやFGF-2などを用いてアプローチした例を多数提示。動画を交えながら、切開、剥離、縫合といったテクニックのポイントをわかりやすく解説した。

 午後に開催されたシンポジウム4の「Society5.0時代の新しい歯科診療環境の構築に向けた取組み」では、森田晴夫氏(株式会社モリタ代表取締役社長)により、株式会社モリタと大阪大学歯学部附属病院が開発を進めている「my Dental AI」が紹介された。my Dental AIは、チェアや診療室内に搭載されたセンサーやカメラが術者と患者の動き、器具の操作を記録し、それをもとにAIが診療の補助や予期せぬ危険の回避、カルテ作成の補助などを行う技術。まだデータを蓄積している段階だが、実現すれば、歯科医療者の時間的・体力的負担が抑えられ、より安全・快適な診療につながることだろう。

 なお、当日の現地参加が叶わなかった方、もう一度講演を視聴したい方向けに、きたる11月1日(月)から11月30日(火)にかけて一部講演のWeb配信が開始される予定。福田光男氏(愛院大教授)による市民公開講座「痛くない歯周病のメンテナンス法について―抗菌光線力学歯周療法について―」は、Webのみでの配信となる。