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2022年3月17日

(公社)東京都港区麻布赤坂歯科医師会創立100周年/京都大学iPS細胞研究所(CiRA)設立10周年記念市民公開講座が開催

「再生医学が未来を拓く〜歯の細胞とiPS細胞の可能性〜」をテーマに山中伸弥氏らが講演

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 さる3月17日(木)、国際医療福祉大学東京赤坂キャンパス(東京都)において、公益社団法人東京都港区麻布赤坂歯科医師会創立100周年/京都大学iPS細胞研究所(CiRA)設立10周年記念の市民公開講座「再生医学が未来を拓く〜歯の細胞とiPS細胞の可能性〜」が開催された。本市民講座は2020年に麻布赤坂歯科医師会が創立100周年を、京都大学iPS細胞研究所が設立10周年をそれぞれ迎え、これを記念したものであったが、新型コロナウイルス感染症拡大のため2年延期となり、満を持しての開催であった。

 本市民講座は2部構成で、まず東京都港区麻布赤坂歯科医師会会長の綱島俊幸氏(東京都開業)による開会の挨拶が行われた後、第1部では、山中伸弥氏、濵崎洋子氏(ともに京大iPS細胞研究所教授)、中原 貴氏(日歯大教授)による講演が行われ、第2部では、河奈裕正氏(神歯大教授)をモデレーターとしたシンポジウムが行われた。

 第1部の1題目は中原氏が「歯の細胞と再生医療」と題し登壇した。歯髄の組織採取から細胞培養の過程を解説しながら、歯科の場合、完成する前の細胞が得られることなどが医科との違いであることや、歯髄幹細胞は増殖率が高く多分化能をもつことを挙げ、すでに臨床研究で実績のある歯髄再生などの取り組みを披露した。最後に、日歯大の「歯の細胞バンク」など、再生医療への取り組みを紹介した。

 2題目は濵崎氏が「免疫の老化と再生医学」と題し登壇した。濵崎氏は、がんやウイルス感染制御の中心を担うT細胞とその産生臓器である胸腺の発生・老化機構の解明と、その機能再生を目指している。講演では、T細胞の種類やそのはたらきであるウイルスやがんに対する免疫応答について、関与する胸腺上皮細胞のはたらきなどをわかりやすく解説。その後、現在取り組んでいる成人群と高齢者群の新型コロナウイルスワクチン効果を比較した研究などを供覧した。また、iPS細胞を用いた胸腺上皮細胞の培養の取り組みについても紹介した。

 3題目は山中氏が「iPS細胞 進捗と今後の展望」と題し、iPS細胞の研究を始めたきっかけや現在までの軌跡について、自身の研究のルーツである父親の話を交えながら紹介。またiPS細胞の特長についてわかりやすく解説しながら、再生医療や創薬研究に貢献できるiPS細胞ストックプロジェクトについてもふれた。さらに研究の課題として時間と費用を挙げ、それらを解決するための現在の取り組みについても紹介した。

 第2部では、河奈氏の進行のもと、中原氏、濵崎氏、山中氏によるシンポジウムが行われた。中原氏には「歯の細胞バンク」について、濵崎氏には「T細胞の加齢と老化」について、山中氏には「日米の研究における違いや研究者に対するアドバイス」などについて質問が寄せられた。

 閉会の挨拶では、山中氏が「研究費用は公金や寄付などで賄われており、本日のような市民講座などでたくさんの方に知ってもらうことも重要と考えている。このような取り組みは今後も行っていきたい」と述べ、本市民講座は締めくくられた。