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2022年4月21日

NPO法人日本口腔科学会、第76回学術集会を開催

「口腔科・口腔科学のSDGsと未来」をテーマに

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 さる4月21日(木)から23日(土)の3日間、福岡国際会議場(福岡県)において、第76回NPO法人日本口腔科学会学術集会(中村誠司理事長・大会長)が開催された。本学会は日本医学会に属する唯一の歯科系の分科会であり、特別講演4題、シンポジウム9題、教育研修会などが行われた。なお、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、一般演題およびポスター発表についてはWeb配信のみとなった。

 「シンポジウム 超高齢社会における歯科治療のSDGsと未来 ~高齢者の栄養と口腔機能~」では、まず柏崎晴彦氏(九大教授)が「地域在住高齢者における口腔機能と栄養 ~糸島フレイル研究~」と題し講演。口腔機能の低下を早期に発見し、適切な対応をすることが高齢者の栄養改善に重要と強調した。また福岡県糸島市での研究から、60代以降の舌圧や舌口唇運動機能の低下を指摘するとともに、舌挙上運動が口腔機能向上に効果的であるほか、運動機能や栄養状態にも影響を与える可能性があることを報告した。

 続いて片倉 朗氏(東歯大教授)が「口腔機能低下症を的確に評価してフレイルと低栄養を予防する」のなかで、口腔機能低下症のアウトカムは低栄養であるが、診断後の患者への生活指導や栄養指導等、現場で具体的にどう対応するか、より明確にすべきではと指摘した。また、栄養指導における歯科医師・歯科衛生士と管理栄養士との連携の重要性を強調するとともに、病院長として自院に設置した管理栄養士が常駐し、通院患者でなくても利用できる栄養管理ステーションの活動を紹介した。

 最後に渡邊 裕氏(北大准教授)が「要介護高齢者における栄養と口腔機能の関係」と題し、全国の介護保険施設入所者への調査から、肺炎発症や栄養状態の維持との関係で、歯科口腔にかかわる医療介護サービスを受けていることが、その改善に寄与していると指摘し、歯科がかかわることの重要性を強調した。

 「シンポジウム 歯科インプラント治療のSDGsと未来 ~人生100年時代の口腔インプラントを支えるために~」では、 まず鮎川保則氏(九大教授)が「持続性のある口腔インプラント治療を見据えたインプラント体の進歩」と題して講演。インプラント治療のSDGsとは、予後が長期にわたり良好であることと述べ、長期予後を脅かす最大の原因の1つがインプラント周囲炎であると指摘。その発症要因となるインプラント体の粗面について、歯肉近接部を滑沢にして発症予防につながる製品の登場や抗菌性の付与など、産学共同でリスク回避に向けて行っている取り組みを紹介した。

 続いて鈴木秀典氏(大阪府勤務)が「100年生きる高齢者にとっての口腔インプラント治療の役割」のテーマで登壇。25年の臨床経験を通じて、インプラントとともに患者は老いていくことを指摘し、インプラントが人生の最後に諸刃の剣とならないよう、患者の状況に応じてACP(アドバンス・ケア・プランニング:人生会議)を実施し、健康なうちにお口(歯)の終活として今後の治療・療養について話し合っておくことが望ましいと述べた。また、高齢だからインプラントの埋入は不可能というわけではなく、IARPD(インプラントパーシャルデンチャー)の活用も視野に入れた、老化に備えた転ばぬ先としてのインプラントの実施を提案した。

 最後に菊谷 武氏(日歯大教授)が「誰も置き去りにしない世界を目指すSDGsに歯科は応えられているのか?」と題し、訪問診療の現場で口腔内にインプラントの残された、がん、心肺疾患、認知症・老衰の3パターンの終末期症例で、歯科とのつながりが途切れて口腔内に問題の生じていたケースにおける自院での対応を紹介。高齢になるとそれまでかかっていた歯科医院とのつながりが途絶えてしまうことが多い現状を指摘し、SDGsの意味である“置き去りにしない”に歯科は本当に応えているか、問題提起をした。

 「シンポジウム 口腔のマイクロバイオーム研究のSDGsと未来」では、まず山下喜久氏(九大教授)が「歯科保健医療の持続的発展を支えるマイクロバイオーム解析」と題して登壇。高騰する医療費の限界を見据え、予防を中心とした政策が重要視されるなかで、歯科として予防効果を可視化する必要性を強調。福岡県久山町での研究をもとに唾液の細菌叢から個人の口腔や全身の疾病リスクの解析が可能になるとの将来展望を交えて、歯科保健医療の持続的な発展を支えるうえでの口腔マイクロバイオーム研究の意義を述べた。

 続いて高橋信博氏(東北大教授)が「口腔マイクロバイオームの代謝多様性と健康の未来:共生パートナーとしての多義性と代謝ネットワーク機能」のなかで、これまでの単一の病原微生物が対象から、多様な微生物の集合共生体であるマイクロバイオームを対象として、健康維持・増進のための共生パートナーであるシステムとして捉えることが重要と指摘した。また、血圧を低下させる亜硝酸塩の産生菌の存在などを紹介し、副次的な代謝が口腔のみならず全身の健康増進へ影響することが解明されてきた成果を報告した。

 最後に天野敦雄氏(阪大教授)が「マイクロビオームの変動を反映する唾液メタボローム解析から全身を見据える」との講演で、歯周組織の炎症の進展によって唾液中に増加する代謝物の同定や、唾液中の生活習慣病バイオマーカーを用いた糖尿病や動脈硬化の発症を予測できる代謝物を同定したとの研究成果を紹介。唾液は口腔や全身の変動を映す鏡であり、将来的に誰もができる健康状態の診断として唾液検査が役立つ可能性に言及した。

 そのほかにも、SDGsを切り口とした画像診断、歯周病、周術期等口腔機能管理、再生医療、骨補填材、矯正歯科の多彩なテーマでシンポジウムが繰り広げられた。また、日本医学会に所属する本学会ならではの企画として、120周年を迎えた日本医学会の会長である門田守人氏の講演と、日本歯科医学会会長の住友雅人氏の講演が行われた。講演後は両氏がそろって登壇し、学術団体として医学と歯学の連携をはかり、輪を広げていくことの意義を語り合った。

 次回第77回学術集会は、きたる2023年5月11日(木)から13日(土)の3日間、岡山コンベンションセンター(岡山県)において開催予定となっている。