2023年9月3日掲載

「歯を守る う蝕治療 スタッフと進めるカリエスマネジメントの実際」をテーマに

日本ヘルスケア歯科学会、Caries Management Seminar 2023を開催

日本ヘルスケア歯科学会、Caries Management Seminar 2023を開催
 さる9月3日(日)、エッサム神田ホール2号館(東京都)において、日本ヘルスケア歯科学会(高橋 啓代表)がCaries Management Seminar 2023を開催した。本セミナーでは、杉山精一氏(日本ヘルスケア歯科学会副代表、千葉県開業)と、同氏の医院に勤務する歯科衛生士の蓮見 愛氏が講師を務めた。

 午前はまず冒頭で杉山氏が、「自分は書籍を読んでいてもついつい読み飛ばしてしまうことがあるので、今日は本セミナーの推奨図書である『歯を守る う蝕治療ー非切削う蝕治療へのパラダイムシフトー』(小社刊)についてじっくりと解説していきたい」と自著を紹介した。

 そして、日本人の抜歯原因について、「現在は歯周病が大きく取り上げられているが、う蝕をう蝕そのものだけでなく、う蝕治療の後に起こる歯牙破折まで含めたう蝕関連疾患とすると、占める割合は歯周病よりも多いのではないかと思う」と語った。そのうえで、削って詰めるだけの従来型のう蝕治療から、患者の定期来院によるFilling Freeを目指したう蝕のマネジメントへの転換が求められていると訴えた。そして、新しいう蝕のマネジメントには、う窩になる前の段階の評価が可能なICDAS(International Caries Detection and Assessment System)のコード1~4の管理が重要であると述べた。その後、X線でのう蝕の評価方法であるXRや、う蝕の活動性について、さらにはカリエスリスクを把握するためのCRASP(Caries Risk Assessment Share with Patients)の活用法や、臨床に必要なフッ化物の知識について解説した。

 午後は、う蝕の管理に欠かせない口腔内写真の撮影方法や、杉山歯科医院での成人患者・小児患者の初診から治療に至るまでの実際の流れについて、まず蓮見氏が説明した。その後、杉山氏が咬合面・隣接面・根面のう蝕症例を供覧し、MIH(Molar Incisor Hypomineralization:エナメル質形成不全)の発現頻度についても示した。また、蓮見氏は、幼少期からずっとかよっていたローリスクの患者が、生活環境の変化などから中学2年生でハイリスクに変化した症例を示し、長期に患者を診ていく重要性を述べた。

 質疑応答では、フッ化物をどうしても嫌がる患者への対応や、歯磨剤の処方、根面カリエスについての質問が挙がった。また、休憩時間中にはセミナー受講者の持参した書籍に杉山氏がサインをして記念写真を撮るなど、著者と読者の交流が深まる場ともなった。

 なお、日本ヘルスケア歯科学会はきたる11月3日(金)、4日(土)の両日、建築会館ホール(東京都)の現地およびWeb配信にて、Health Care Meeting 2023を行う予定である。

関連する特集