2023年11月10日掲載

「次世代への継承と新たなる発展 Passing On Our Legacy, Breaking New Ground」をテーマに

(公社)日本口腔外科学会、第68回総会・学術大会を開催

(公社)日本口腔外科学会、第68回総会・学術大会を開催
 さる11月10日(金)から12日(日)の3日間、大阪国際会議場(大阪府)において、第68回公益社団法人日本口腔外科学会総会・学術大会(桐田忠昭大会長、池邉哲郎理事長)が開催された。

 本会は、特別講演1題、教育講演4題、海外招聘講演1題、関連学会理事長講演1題、シンポジウム9題、海外や他学会合同などによるシンポジウム7題、一般口演、ポスター発表などに加え、オンデマンド配信によるミニレクチャー45題、ビデオレクチャー15題と、盛りだくさんの内容で展開された。

 特別講演「未来を切り拓くイノベーション」では、三木谷浩史氏(楽天メディカル代表取締役会長)が登壇。2012年に父親に膵臓がんが発覚した際に「どうにか治したい」との一心から、世界中のあらゆる研究をたどるなかで、当時はまだ開発初期段階であった光免疫療法と出会い、直感的に「いける」と判断して個人的に支援を始めた経緯を紹介。光免疫療法は、現在薬剤と光を組み合わせたアルミノックスプラットフォームという技術基盤となり、2021年1月に頭頸部がん領域の新しい治療法として保険導入され、さらに本年12月より新たに歯科口腔外科領域でも適用となることを報告。革新的な技術を通じて人々をエンパワーメントとし、世界を救うための挑戦を続けていくとの決意を力強く語った。

 「シンポジウム インプラント治療に最適な生体材料とは?」では、「口腔領域における骨補填材としての炭酸アパタイトの評価」と題して、草野 薫氏(大歯大教授)が、炭酸アパタイト骨補填材サイトランスグラニュールを用いた骨造成手術やサイナスリフト症例を供覧のうえ、発売開始後5年経過した現在でもすべて生存していることを紹介し、そのすぐれた特性を報告した。

 つぎに「ボナーク (リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体)の最新情報と今後の展望」と題して三浦桂一郎氏(長崎大講師)が、すぐれた骨形成能を有するボナークの特性を述べるとともに、大規模な骨欠損症例への使用できる高いポテンシャルがあることを提示し、さらなる臨床応用に向けた将来展望について語った。

 続いて丸川恵理子氏(医歯大教授)は「当科における骨補填材の使い分け」と題した講演のなかで、現在インプラント適応に向けて治験段階にあるハイドロキシアパタイト・コラーゲン複合体(リフィット)の高い有効性について紹介するとともに、多くの骨補填材が承認されることにより、さらなる低侵襲治療が進展することへの期待を寄せた。

 最後に松野智宣氏(日歯大教授)より「抜歯即時埋入とソケットプリザベーションに最適な骨補填材とノンメンブレンテクニック」として、これらの術式に用いる骨補填材料や、バリアメンブレンを使わないシンプルで有用性の高いコラーゲンスポンジ(テルプラグ)を用いた技法について紹介した。

 「シンポジウム MRONJ 予防・治療のための医歯薬連携」では、まず岸本裕充氏(兵庫医大教授)から、本年7月に改訂されたMRONJポジションペーパーについて、1)ARONJからMRONJ に呼称を変更、2)診断・ステージ分類はマイナーチェンジ、3)わが国の薬剤・用量別にみた発症頻度(日本の患者数は増加傾向)、4)リスク因子として抜歯よりも抜歯を必要とする歯性感染を重視、5)抜歯前の骨吸収抑制薬の予防的休薬は原則不要、6)MRONJ 治療における手術の優先度が高まった、7)「医科歯科」から薬剤師も含めた「医歯薬」連携へ、との7つの要点が解説された。

 つぎに、田口 明氏(松本歯科大教授)から「MRONJ に関する医科歯科連携調査」との講演で、日本骨粗鬆症学会会員の医師に行ったアンケート調査より、以前に比べ医師と歯科医師の連携は進んでいることを報告するとともに、連携の取り組みにおける地域差が大きいなどの課題を指摘した。

 続いて「癌治療におけるMRONJ 対策のための医歯薬連携の必要性」と題した講演で、田口哲也氏(医師、京都府立医大名誉教授)は、がんの骨転移に対しては病的骨折予防のために骨吸収抑制薬投与は必要であるが、その投与量や投与期間に応じてMRONJのリスクが高くなることから、医歯薬の情報共有が必須であり、投与開始前からや長期にわたっての歯科との連携による口腔衛生管理の重要性を強調した。

 「薬剤性顎骨壊死を予防するための医歯薬連携を考える 薬剤師の立場から」との講演で、新井さやか氏(薬剤師、千葉大病院薬剤部副薬剤部長)は、医科・歯科・患者との橋渡し役として薬剤師の果たす役割は重要であり、その土壌はできつつあるものの、よりいっそう密な連携が必要との見解を述べた。

 最後に野村武史氏(東歯大教授)から「MRONJ ポジションペーパー2023 からわかる今後の課題 治療医の立場から」との講演で、口腔外科医が治療医としてMRONJの的確な診断・治療を行うことの重要性を強調するとともに、一般開業歯科医と医師、薬剤師との橋渡し役として、その予防に貢献することが必要と述べた。

 4年ぶりにポスター発表も現地開催となり、Web参加も含めて6,000名を超える多数の登録があり、現地会場は初日の午前から多くの参加者が集うなど、熱気にあふれていた。次回学術大会は、きたる2024年11月22日(金)から24日(日)の3日間、パシフィコ横浜(神奈川県)で開催予定である。

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