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2008年10月19日

「QDT購読キャンペーン講演会 いまさら聞けない補綴治療」(第5回・札幌会場)開催

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 さる10月19日(日)、札幌厚生年金会館(北海道)において「QDT購読キャンペーン講演会 いまさら聞けない補綴治療」(第5回・札幌会場)が開催された(クインテッセンス出版主催)。第5回目を迎える本講演会は、既報のとおり「補綴雑誌」としての「QDT」を若手歯科医師にいっそう周知する目的で開催されたもの。会場には多数の若手歯科医師がつめかけ、盛況となった。以下に、各演題の概略を示す。

(1)「補綴治療の基礎を学ぶことの重要性」(小濱忠一氏、福島県開業)
 本講演の冒頭で小濱氏は、卒後4年目でフルマウスリコンストラクションに取り組んだ症例と、1989年に装着したメタルセラミッククラウンに歯肉退縮が生じた症例を提示。「卒業直後は歯内療法や歯周治療、そして補綴治療の関連について理解できていなかった」と述べながら、補綴治療を成功させるには1本の歯を診るだけではなく、周辺分野の知識や口腔内全体を診ることが必要である旨を述べた。また、不可逆的な処置となることが多い補綴治療にあたっては診査・診断を確実に行うことが重要であるとし、その順序について具体的に示した。

(2)「実践! 若手歯科医師のための歯冠修復マニュアル まずはここから 特別編:いまさら人に聞けない咬合採得・咬合調整」(萩原芳幸氏、日大歯学部歯科補綴学教室3講座准教授)
 本講演で萩原氏はまず、「治療に用いる顎位を正しく理解し、選択する」ことが重要であるとし、顎位の種類を治療の必要性をもとに分類した。その後、咬合採得法の解説に移り、各種咬合採得材料の特徴やアンテリアジグの応用、そしてフェイスボウトランスファーの重要性などについて述べた。
 また、咬合調整については、「まずは自分が使っている咬合紙の厚みを知ろう」「歯軸に対して直角にバーを当ててはならない」「歯髄炎の症例ではまず咬合をチェックしよう」など、臨床に役立つ多くのヒントを示していた。

(3)「噛める入れ歯の調整法」(細見洋泰氏、東京都開業)
 本講演で細見氏は、まず高齢者が義歯の問題に遭遇した際に生じる患者・歯科医師双方の経済的な問題点に言及。「医は仁術」ではあるが、納得のいく治療を行うためには歯科医師も自費診療を勧めざるを得ないことがあり、患者もそれに応じられないことが多いという点を訴えた。また、「歯科医師の仁義」や「歯科医師のプライド」としては低い報酬で患者を救うことが理想だが、それでは歯科医師の生活が立ち行かなくなるため、これに対しては「現行の社会保険医療制度の改善を待たなければならない」「現状では、歯科医師はだれも悪くない」とした。
 また、臨床に関する内容としては、顎堤の吸収度に応じた製作時の対応、旧義歯の形態修正・咬合調整のポイント、印象採得時の個人トレーに関する注意点や印象材の選択法、そしてパウンドラインに沿った人工歯排列やリンガライズドオクルージョンの付与法などについて多数の症例をもとに述べた。

(4)「失敗症例に学ぶインプラント修復」(小濱忠一氏、福島県開業)
 本講演で小濱氏はまず、「最近インプラントに取り組みはじめた歯科医師はインプラント治療の外科的手技に興味が行きがちで、上部構造については歯科技工士任せとなってしまっていることが多いようだ」と述べ、歯科医師自身が主体的に上部構造の形態にかかわることと、歯科技工士との連携を図ることが重要だと述べた。また、上部構造の形態はあくまでも天然歯が基本となるとし、積極的にカスタムアバットメントを選択することで高い清掃性と審美性、そして歯肉との調和を図ることができるとした。また、CAD/CAMを用いたコーピングの製作においても天然歯を意識することは同様であり、築盛用陶材の厚みを均一にするためのダブルスキャニング法について示した。
 この他、インプラント上部構造のチッピングを防ぐためにはハイブリッドレジンでは耐久性に難があること、また後方にブレーシングのない咬合を付与しないことなどについても示され、まさに「失敗症例に学び、失敗を回避する」ための内容となっていた。
 なお、本講演会はひきつづき、2008年11月2日(日)に新潟、2009年3月に名古屋で、同4月に金沢での開催が予定されている。