2022年11月号掲載

歯科矯正治療における3D診断と治療計画の最新情報が日本語訳で読める貴重な1冊

【PR】3D診断と治療計画を基本から学習するための必須情報が満載!

※本記事は、「新聞クイント 2022年11月号」より抜粋して掲載。

 小社9月の新刊として『歯科矯正学における3D診断および治療計画 アライナー、OSA、TMD治療にも応用できる最新のデジタル矯正』が刊行されました。歯科矯正学に長年携わってこられた葛西一貴氏(日本大学特任教授)に、本書の詳細と見どころを語っていただきました。 (編集部)

卒前教育では学べない最新の3D診断の基礎が学べる

 本書のすばらしさは、多くの専門家からの寄稿によって構成されており、それぞれの分担にまとめがあり、読みやすいことです。監修者の能力はもちろんですが、訳本を読んで感じたことであるので、訳者の先生方のご苦労によるものと推察いたします。

 監訳者の三林栄吾先生の言葉どおり、歯科矯正学の卒前教育ではデジタル矯正歯科治療の教育はほとんど行われていません。しかし、矯正歯科治療を本格的に学ぶために臨床の現場に出ると3D情報は身近にあり、これらをどうやって診断に活用し、さらに治療計画に応用するかなどの問題に直面することになります。本書はまさにこれからデジタル矯正歯科治療を学習する者にとって役立つに違いありません。

自身のニーズに合った3D情報の活用法を知る

 歯科臨床においてCTやMRIは、一般的な診断機器となっています。ところが矯正歯科臨床においては、顎変形症の診断、埋伏歯の状態把握、顎関節症の診断とその用途は限られています。なぜなら3D情報の活用法を知らない、あるいは必要な分析用ソフトがないからです。それらを解決するためにはまず正しい情報を手に入れ、自分のニーズに合った処理方法を知り、活用するためのソフトに接する必要があります。本書は、矯正歯科治療に対する自身のニーズを整理するためにも活用できる内容となっています。

 35年前になりますが、私は3D診断を目指した一人の研究者でした。当時はモアレ写真を用いた顔面の3Dモデルの作製や顎変形症の手術前後の顔面形態変化を測定して学会誌に発表していました。当時はパソコンで自作ソフトを用いて分析しましたが、顔面のモアレ写真から3D座標値を出すために半日の時間を要しました。しかし、今は瞬時にして3Dデータを得ることができます。そしてこれからはもっと短時間に多彩な分析・表示が可能となるでしょう。デジタルの世界は留まることなく進化しています。いつしか本書も過去の遺物となるでしょうが、今は最先端の1冊といえます。

矯正歯科臨床における3D情報の活用法を学ぶ

 Part 1は「歯科矯正診断に用いられるテクニック」として、現在矯正歯科臨床で使用されているさまざまな3Dデジタル技術を紹介しています。まずはそれぞれの情報の特徴と活用法を知ることです。これまでの口腔模型とセファロ分析の診断から、膨大な量の診断情報を手に入れることができるようになり、新たなデジタル診断パラダイムへと進化していることを知ることができます。本書は、現実的な問題点や今後の展望について正直に記載されており、このことが読者の安心感につながるものと思われます。

 3D情報は、矯正歯科医の診断精度・治療計画能力を向上させる可能性がありますが、それには根拠となる膨大な情報量が必要となると1章に記載されていることからも、本書は科学的根拠に基づいて執筆されていると推察できます。これから学習する者にできるだけ正しい情報を伝えようとする筆者らの姿勢が評価できます。

本書は2部構成 まずは基礎情報を理解する

 Part 1では、コーンビームCT(CBCT)、口腔内スキャナの特徴や活用法などを盛りだくさんの写真で解説しています。いまさら聞けないと感じているシニア世代の矯正医にとってもありがたい情報です。埋伏歯の診断、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の診断、さらに市販のソフトによる計測法の紹介など詳細に記載しています。矯正歯科臨床の現場ですぐに使用できる心遣いです。

 また診断法のみではなく、その応用法についても紹介しています。特にCBCTは日常的に使われており、顎変形症のシミュレーション、手術用スプリント作成、3Dプリンターへの出力なども紹介されています。

さまざまな技術を理解したところで、応用へと進む

 Part 2は、「画像診断技術に基づく適応、応用、プランニング」として、臨床例を提示して解説しています。特に9章では、二次元と三次元のオクルソグラムを用いた治療目標と治療計画の可視化として、症例を用いてわかりやすく説明しています。実際の症例について、市販されている解析ソフトを使用した実例を提示して説明しているので理解しやすいです。VTOや二次元と三次元のオクルソグラムの使用は、矯正医が診断や治療計画立案に役立つばかりでなく、患者が自身の治療を理解するうえでたいへん役立ちます。しかし、ここでも予測精度を向上させるためにさらなる研究が必要と述べています。このような真摯な態度が本書の質の高さを証明しています。

デジタル化を考えている矯正歯科医にとって必須の1冊

 現在、デジタル化が進んでいますが、診断・治療計画がすべて自動的に設定できるわけではありません。矯正歯科医は、矯正歯科治療に必要な技術、バイオメカニクスなどの知識を身につけ、デジタル技術や情報を正しく活用し、初めて患者の治療に着手できるものと考えます。デジタルの世界は進歩が目まぐるしく、つねに情報を得る手段が必要ということも忘れずにいたいものです。本書はこれからデジタル化を考えている矯正歯科医にとって必須の1冊といえます。

 最後にたいへん読みやすい日本語に翻訳された監訳者の三林栄吾先生や深澤真一先生をはじめ、多くの訳者の先生方に敬意を表します。

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