2025年2月号掲載
Dual-Zoneマネジメントを理解しよう!
【PR】 巨匠・Tarnow氏とChu氏による単独歯インプラントの決定版!
※本記事は、「新聞クイント 2025年2月号」より抜粋して掲載。
小社2024年11月の新刊として『シングル・トゥースインプラント 前歯部および臼歯部抜歯窩に対する低侵襲アプローチ』が刊行されました。本欄では、監訳者のお一人である鈴木仙一氏(神奈川県開業)に本書の見どころを語っていただきました。
(編集部)
ターナー先生より直接アドバイスをいただいて翻訳を進めた本書
審美歯科の巨匠であり、世界一引用件数が多い論文をもつコロンビア大学教授のDr. Dennis Tarnowとニューヨークで同じSDNY Dentalチームで補綴担当のニューヨーク大学教授Dr. Stephen Chuの力作である『The Single-Tooth Implant』の日本語版を上梓する運びとなったことは、このうえない喜びであります。
日本語版を上梓するにあたり、私のメンターであるターナー先生に直接、注意点などアドバイスをお伺いしたところ「No one better」とのお言葉をいただき、より身の引き締まる思いでした。コロナ禍前までは、20年以上の長きにわたり毎年、ターナー先生の講義は少なくとも1年に1回はニューヨーク、あるいはその他の国で拝聴していましたので、つねづね「ターナー先生の理論が教科書になったら良いのに」と思っておりました。そのため、本書は満を持して上梓されたという感想です。
歯科医師であれば一度は耳にしたことがあると思われる「歯のコンタクトポイントと歯槽骨頂の距離が5mm以内であれば、ほぼ100%の確率で歯間乳頭ができる」というエビデンスをもとに1992年にローンチされた「The effect of the distance from the contact point to the crest of bone on the presence or absence of the interproximal dental papilla」が世界一引用件数の多い論文です。また、「プラットフォームスイッチングインプラントの場合、インプラントとインプラントの距離が、プラットフォームスイッチングではないインプラントが3mmであるのに対して、2mmで良い」というエビデンスも検証されました。
臨床において非常に有益で大事なエビデンスの数々をつくり上げた天才であるといっても過言ではないと思います。本書においては、前歯部、特に抜歯即時インプラントにおいていかに審美的にインプラントを埋入し、長期的な成功を得るかということが理解できる内容になっています。
1歯欠損にともなうさまざまな症例を細部にわたり解説
本書の内容を紐解いてみますと、1歯欠損にともなうさまざまな症例をエビデンスに基づき、パターン別に細部にわたり説明している内容となっています。以下は、目次の一部になります。
○CHAPTER 1 前歯部および臼歯部シングル・トゥースインプラントの歴史と根拠
抜歯後即時埋入と待時埋入の比較/臨床例/抜歯即時インプラント埋入の課題/抜歯窩の分類/抜歯窩マネジメントのための診断補助:X線撮影と臨床検査
○CHAPTER 2 抜歯窩Type 1のマネジメント
フラップを挙上しての抜歯とフラップレスによる抜歯の比較:エビデンスに基づいた根拠/適切な器具を使用した抜歯テクニック/前歯部抜歯窩における三次元的なインプラント埋入位置/軟組織の水平的な厚み/ギャップ幅と創傷治癒/骨の厚みと歯槽堤の寸法変化/インプラント周囲軟組織の厚み/抜歯窩のDual-Zone マネジメント/ヒーリングアバットメントの取り外しにともなう出血/セメント固定式、スクリュー固定式プロビジョナルレストレーションおよび最終補綴装置/アバットメントの選択:材料および色において考慮すべき事項/根尖病変、瘻孔、アンキローシスをともなう歯の管理/抜歯後即時埋入におけるインプラントデザイン
○CHAPTER 3 抜歯窩Type 2のマネジメント
抜歯窩Type 2 への即時インプラント埋入/抜歯待時インプラント埋入/治癒した顎堤への抜歯待時インプラント埋入のためのフラップデザイン
○CHAPTER 4 抜歯窩Type 3のマネジメント
3mmの唇頬側中央部の歯肉退縮の治療/唇側骨の欠損をともなう1mmの唇頬側中央部の歯肉退縮の治療
○CHAPTER 5 臼歯部の臨床的マネジメント
複根歯の抜歯/大臼歯部抜歯窩へのインプラント埋入/大臼歯部への抜歯即時インプラント埋入の代替法/臨床例/大臼歯部への待時埋入プロトコール
○CHAPTER 6 インプラント治療における重要事項
セメント固定法/印象採得テクニック/併発症
○CHAPTER 7 臨床症例集
キーワードは「Dual-Zoneマネジメント」!
なかでも、キーワードは「Dual-Zoneマネジメント」という言葉にあります。この言葉はターナー先生がつくった造語です。Dual-Zoneとは、文字通り「2つの領域」という意味です。その1つが、歯槽骨頂より下の部分、つまり抜歯窩内、もう1つが骨頂より上の部分、つまり歯肉縁から骨頂までの部分、言い換えれば骨部分と軟組織部分になります。これは、より審美的に、また、より天然のコンポーネントである歯肉、骨、歯間乳頭を利用したエマージェンスプロファイルを美しく仕上げるためには、骨縁下の増生だけではなく、天然の軟組織の形状維持と、骨縁下の増生をより確実にするために、骨縁上の歯肉の部分の増生も重要だというコンセプトです。長期的な審美を獲得するためには生物学的幅径の原則が重要で、それを達成するためには「Dual-Zoneマネジメント」が必要になるということです。
また、Dual-Zoneのイメージをわかりやすく可視化するために、ターナー先生の許可をいただき、原著にはない図を作製して掲載しています。ターナー先生もそのイメージ図をたいへん気に入ってくださり、「今後このイメージ図を使わせてもらいます」というお言葉もいただきましたので、ぜひ本書でチェックしてみてください。
学びこそが、良い医療を提供する原点であります。マハトマ・ガンジーの名言に「Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever(明日死ぬかのように生きろ。 永遠に生きるかのように学べ)」とあります。本書を手にした先生方が増えることにより、日本のインプラント治療のレベルがより向上し、ハッピーな患者さんが増えることを祈念いたします。
最後になりますが、翻訳に際して、本書の価値を理解し、より多くの日本の歯科医師に有益な情報を届けたいという志のもと、忙しい臨床や日常をも犠牲にして、より読者にわかりやすくなるように努力して翻訳をしていただいた先生方に、この場をお借りして心より感謝を申し上げます。
