社会|2025年4月22日掲載

アライナー矯正治療における合併症とAI支援セファロ分析プラットフォームについて語る

THE ORTHO JAPAN×KOREA JOINT MEETING開催

THE ORTHO JAPAN×KOREA JOINT MEETING開催

 さる4月20日(日)、東京ポートシティ竹芝ポートホール(東京都)において、THE ORTHO JAPAN×KOREA JOINT MEETING(Aligner Radio主催)が開催され、約150名が参集した。

 本会は、アライナー矯正治療の学びとコミュニケーションを共有するユニットAligner Radioとして活動中の岡野修一郎氏(フリーランス矯正歯科医)と南舘崇夫氏(福岡県開業)、そして渡部博之氏(愛知県開業)の、韓国矯正歯科学会における出会いを契機として生まれたもので、日本から上述の3名、韓国から5名の演者が登壇し「アライナー矯正と合併症;歯肉退縮、歯髄壊死、ボウイングエフェクトへの対応」「WEBCEPH、韓国における矯正治療」の2テーマについて8講演が行われた。

 そのうち岡野氏、南舘氏、渡部氏は歯髄壊死・歯冠変色を中心に「アライナー矯正治療と合併症」についてそれぞれ講演を行った。南舘氏は「自身の臨床経験から歯髄壊死はアライナー矯正治療でより多く生じる印象」とし、歯髄壊死に関する文献や資料を供覧しながら、国際ガイドラインに基づいた対応やその後のアライナー矯正治療での工夫および配慮について述べた。渡部氏も深刻な合併症を含めて症例供覧し、CBCT画像で読み取れる情報やどのようにトルクを調整して治療を進めていったかを詳細に述べた。岡野氏は、中切歯の根尖が歯槽骨から逸脱し歯冠変色が生じた3症例を並行して見比べながら、それぞれの資料分析および行った治療(変則抜歯・Ⅱ級ゴム併用下の同時移動・上顎両側小臼歯抜歯)について解説を行った。3演者は共通して、歯髄充血・歯髄壊死の発生率は1%あるいはそれ以下という臨床実感ではあるが、発見の速さが重要で、CBCT画像および治療期間中の遠隔モニタリングツールの活用を含めた詳細な観察が重要であることを強調していた。

 韓国からはチェ・グァンヒョ氏、チェ・ジェウォン氏、イム・ソンジン氏、イ・ユソン氏(いずれも韓国開業)が登壇し、それぞれⅡ級不正咬合を有する成長期の姉妹に対するアライナー矯正治療戦略、貼って剥がせる前歯部用ラミネートベニアを用いた審美的な包括的歯科治療、前歯部骨切り術とアライナー矯正治療の併用症例、韓国における小児患者向けアライナー矯正治療の需要および治療の実際について講演した。日韓は同じように少子高齢化を迎えており、矯正歯科への影響が懸念されるいっぽうで、韓国における小児の歯並びに対する意識の違い、審美性に対する意識の高さを感じられる講演となっていた。

 最後にキム・イェヒョン氏(韓国開業、assemble circle社CEO)が、自身が開発し運用を行っているAI支援セファロ分析プラットフォームについて講演した。「矯正歯科医にとって説明するまでもなく重要でありながら、もっとも時間と精神的負担が大きいセファロ分析を効率化したかった」と開発の動機を述べたあと、学術的な検証や実際の使用方法について解説した。さまざまな分析法を搭載した本プラットフォームでは、キャリブレーション機能を使って簡便にセファログラムの重ね合わせとセファロ分析が行えること、またより適切な矯正歯科治療のための機能を開発中であることが語られ、矯正歯科治療の革新が大きく進んでいることを実感できる本会の締めくくりにふさわしい講演となった。

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