学会|2025年7月23日掲載

「3Dプリンティングを活用した最先端の歯科矯正治療」をテーマに

日本3Dプリンティング矯正歯科学会、第4回学術大会を開催

日本3Dプリンティング矯正歯科学会、第4回学術大会を開催

 さる7月20(日)、21日(月)の両日、野村カンファレンスプラザ日本橋(東京都)において、日本3Dプリンティング矯正歯科学会第4回学術大会(竜 立雄大会長、山口修二代表理事)が開催された。「3Dプリンティングを活用した最先端の歯科矯正治療」をテーマに、全国各地から歯科医師を中心に、歯科技工士、歯科技工士学校の学生らが参集し、盛会となった。

 1日目の依頼講演では、阿曽敏正氏(株式会社アソインターナショナル代表取締役)と千葉 実氏(歯科技工士、同社CAD/CAM技術主任)が「デジタル矯正における現状と今後」と題して講演を行った。阿曽氏は自社の世界的展開およびKelvin Wen-Chung Chang氏(台湾大学)との共同症例を通して、3Dプリンターでダイレクトプリントするアライナーの臨床的有用性について紹介した。また千葉氏は、訪問したイタリアのTAD(Temporary Anchorage Device)事情および韓国の歯科医師チョ・ホンジェ氏の開発した外科シミュレーション用ソフトウェアについて紹介した。次いで宇野澤元春氏(歯科医師、株式会社Dental Prediction代表取締役)が「歯科界をイノベーション(?)で変える・未来を創る~歯科DXの現在と未来~」で治療トレーニングに活用できるAR機能搭載のソフトウェア開発について、西尾佳朋氏(愛知県勤務)が「顎変形症における3Dプリンターの活用について」で3Dプリントツールを活用したチーム医療の実践について解説した。

 また今回初めて公開で、学会認定歯科医師・認定歯科技工士資格取得のための認定セミナーが行われ、道田将彦氏(愛媛県開業)が「3Dプリンティングの基礎」、平岡孝文氏(東京都開業)が「3Dプリンターを用いたインハウスアライナー製作プロセスにおける安全対策」、間所 睦氏(東京都開業)が「3Dプリンターで何ができるのか?―臨床を再構築するデジタルの架け橋―」、原田剛志氏(一般社団法人コンピュータ教育振興協会)が「3Dプリンター活用技術検定試験:ものづくりの基礎力と創造力を養う第一歩」と題して講演した。

 2日目の特別講演では、前述のChang氏とAudrey Yoon氏(米国・スタンフォード大学)が講師として招聘された。Chang氏は「3D Printing in Daily Orthodontics」と題して、前半では臨床で3Dプリントを活用したさまざまな矯正歯科治療例を紹介し、後半では形状記憶機能を有するダイレクトプリントアライナーのメリットや設計での工夫などを解説した。Yoon氏は「Precision Expansion: Advancing MARPE with 3D Metal Printing for Maximum Success and Minimal Complications」と題して、3Dメタルプリント技術により可能となったMARPE(TADを利用した急速拡大装置)のカスタムメイド化について紹介した。氏はその中で、従来の装置に比べ側方拡大の成功率が向上した点、合併症を回避するための使用時の注意点、合併症が生じた際の対応などについて症例を交えて解説した。

 また教育講演では、本学会と連携団体となった国際的な標準規格設定機関であるASTMインターナショナルより先進製造プログラム担当ディレクターであるAlex Liu氏がシンガポールから講師として招聘された。Liu氏は「Methods of Qualification and Certification for Additive Manufacturing Applications in Orthodontics and Dentistry」と題して、歯科3Dプリント製品の安全性の認証や標準化の課題について語った。

 続く依頼講演では、月星陽介氏(愛知県勤務)による「3D printing facilitated orthodontics―3Dプリントでもっと便利になる矯正臨床―」、上地 潤氏(北海道開業)による「矯正診断のデジタルワークフローと3D プリンティング」、山口氏(埼玉県開業)による「金属3Dプリンティング技術を応用した次世代の矯正治療」が行われた。このうち月星氏と山口氏は3Dプリント技術による新しい装置の開発について、上地氏は3Dプリント技術黎明期における実験的な治療例を紹介した。

 さらに本大会では新しい試みとして、国内の3Dプリンター販売企業を集め歯科医師、歯科技工士、企業が相互交流できる場とする「3DプリンターEXPO2025」やコンペティション形式の展示企画「3D Printing Idea Awards 2025」が行われた。

 臨床家や現役の歯科技工士のみならず、歯科技工士を目指す学生らにとって3Dプリント技術を学べる貴重な場として、多くの先端的知見が共有された大会となった。

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