歯科保健の重要性を発信し続ける歯科医師

2020年1月号掲載

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2020年1月号掲載

歯科保健の重要性を発信し続ける歯科医師

平時からの歯科保健医療の重要性を次世代につなぎたい

 集中豪雨や台風など、甚大な被害をもたらした自然災害があいついだ2019 年。被災地の避難所などでは歯科医療従事者らの支援活動が行われ、口から全身の健康を守る重要性が発信された。2020 年は阪神・淡路大震災から25 年を迎える。本欄では、口腔ケアと全身疾患の関係を訴え続けている足立了平氏(神戸常盤大学短期大学部口腔保健学科特命教授)にその思いをうかがう。

足立:2020 年は、1995 年1 月17日に発生した阪神・淡路大震災から25 年という節目の年です。私は、その日を迎えるたびに「どんな災害であっても、せっかく生き延びた命を無駄に亡くしてはいけない。被災者の命を守る努力は災害にかかわる者の最大の使命である」という思いを新たにしています。

 この思いは『繋ぐ―災害歯科保健医療対応への執念』(クインテッセンス出版刊)に著していますが、今でこそ常識になった「大規模災害時の口腔保健医療の重要性」は神戸から発信されたものであり、原点だと思っています。当時は口腔ケアと肺炎の関係など知るよしもなく、肺炎予防に口腔ケアが有効であるという米山武義先生(静岡県開業)らの論文が『Lancet』に掲載されたのは震災から4 年後の1999年のことでした。

 そして2004 年5 月14 日、神戸新聞朝刊に衝撃的な記事が掲載されたのです。災害に関連した内科疾患で高齢者が亡くなった関連死の1/4 が肺炎であり、私たちがあの時しっかり口腔ケアを実施していれば災害関連死は少しでも防ぐことができたのではないかと、自責の念にかられました。それ以後、私は平時からの高齢者に対する肺炎予防のための口腔ケアを普及させることが関連死を減らすことにつながると強調するようになりました。

 現在では、口腔ケアは術中・術後の合併症や入院日数の軽減にも寄与し、全身の健康との関連性など、歯科医療従事者だけでなく医療・介護関係者にも周知されてきています。医療連携が叫ばれている昨今、口腔ケアを含めた食べる支援が地域のなかで求められます。脳卒中の患者さんを例に挙げるならば、発症直後はほぼ例外なく急性期病院に入院します。救急救命治療後は回復期病院においてリハビリテーションにつなぎ、そして施設や居宅での療養・生活支援につながっていきます。病院から地域へ患者さんをつなぐ、医療から福祉への連携、食べる支援のためのバトンを普段から皆さんでつなぐ社会や仕組みが必要ではないでしょうか。

 最後に、私が大会長を務める第29 回日本有病者歯科医療学会総会・学術大会が、2020 年2 月28 日から3 月1 日の3 日間、神戸国際会議場において、「繋ぐー地域へ」をメインテーマに開催されます。また、震災を風化させず次世代につなぐための講演やシンポジウムも予定しています。日本歯科医学会の専門分科会として開催する初めての総会・学術大会となりますので、皆様の多くのご参加をお願い申し上げます。