東京2020大会の歯科医療アドバイザー

2020年3月号掲載

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2020年3月号掲載

東京2020大会の歯科医療アドバイザー

日本の歯科のプレゼンスを世界に示すことができる絶好の機会

 1964年以来56年ぶり2回目となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)が、きたる7月下旬から9月上旬にわたり約2か月間開催される。本欄では、同大会医療アドバイザーを務める近藤尚知氏(岩手医科大学歯学部教授)に、歯科に求められる対応やその取り組みについてうかがった。

近藤:私は約20年にわたって日本オリンピック委員会の医学サポート部門員を務めてきました。2016年8月に行われたリオデジャネイロオリンピック大会では実際に視察に行き、大会期間中の実際の医務体制について国際オリンピック委員会(IOC)委員の歯科担当であるDr. Tony CloughとDr. Paul Piccininniから説明を受けました。両氏は2017年11月に開催された日本歯科医師会主催の講演会およびシンポジウム(東京都歯科医師会、日本スポーツ歯科医学会共催)の講師として招聘されました。その後2019年6月、10月にも来日してくださり、オリンピック大会における歯科医師の役割についての情報提供やディスカッションをとおして私たちに大会期間中の対応について検討する機会を与えてくださいました。

 東京2020大会の医務体制については、同大会の組織委員会副会長の河野一郎先生(元筑波大学教授)、メディカルディレクターの赤間高雄先生(早稲田大学教授)を中心として鋭意準備中であり、歯科は東京都歯科医師会会員、関東圏の歯学部・歯科大学の先生方と歯科衛生士の方々を中心に協力していただくことになっています。

 IOCからの要望として、ソフト面においては世界各国の代表選手が滞在する総合選手村に開設されるポリクリニックの歯科診療施設には、外国語のコミュニケーション能力を有し、歯科の専門性を理解している経験豊富な歯科医療従事者の参加が挙げられています。ハード面においては、マイクロスコープなどを用いた精密歯科治療、One day treatmentが可能なCAD/CAMシステム、口腔内スキャナーなどの最新の歯科医療技術によって、選手が競技に即座に復帰できるようなシステムの整備が挙げられています。

 その中でも特に大会期間中のニーズが多いと想定されるマウスガードに関しては、適合の良いものを大量に製作できる体制づくりが挙げられています。2016年のリオデジャネイロ大会の時には、約3週間の大会期間中にマウスガードを約450個製作していたようで、東京2020大会ではそれ以上の数を製作してほしいと要望されています。

 ご協力いただく先生方には、東京2020大会でぜひとも日本の歯科医療のレベルの高さをアピールしていただきたいと思っていますし、私は日本の歯科医療のプレゼンスを世界に示すことができる絶好の機会になると考えています。

 今後は、日本歯科医師会、東京都歯科医師会、大学歯学部と引き続き連携しながら、人材を配置するための研修会など準備していく予定です。