萬人一語

インフォデミック、どう防ぐ

2020年9月号掲載

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2020年9月号掲載

インフォデミック、どう防ぐ

 「インフォデミック(Infodemic)」とは、インフォメーション(Information:情報)とエピデミック(Epidemic:伝染・流行)の2つを連結した言葉である。不確かな情報や虚偽の情報(フェイクニュース)が社会に広く拡散され、人々がそれを真実だと受け止めてパニック状態となり、社会に大きな影響を及ぼすことを意味する。

 新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延し、さまざまな情報が流れることでこの「インフォデミック」という言葉は、注目されるようになった。たとえば、わが国ではマスク不足と同時に「トイレットペーパーも入手困難になる」といった虚偽情報をもとに、トイレットペーパーの買い占めが発生した。また、「ポビドンヨードを含むうがい薬を使うと新型コロナウイルス感染症の重症化防止になる」との発言がテレビで報道されると、うがい薬が品切れとなり、感染対策や消毒のために日常的に同製品を使用している臨床現場にも混乱が生じている。しかし、ポビドンヨードによる含嗽と新型コロナウイルス感染症との関連を裏付ける質の高いエビデンスは明らかになっていない。

 新型コロナウイルス感染症は、治療法や予防法がまだ確立していないため、人々の不安や憶測をよび、「ウイルスに効果がある」とする誤った情報や根拠不明な情報がテレビだけでなくインターネットやSNSによって世界中に拡散されている。「インフォデミック」を防ぐためには、情報リテラシーを身につけ、専門家として適切に発信していくことが求められている。