萬人一語

「食」を支える歯科の新たな形

2020年1月号掲載

関連キーワード:

2020年1月号掲載

「食」を支える歯科の新たな形

 在宅介護者の3 割以上が男性という厳しい現実がある。男性は、明日から身内の介護を余儀なくされた場合、介護をする自信はあるだろうか。介護の中でも「食」への課題が多くある。献立を考え、買い物に行き、調理を行い、そして食事介助をする。命の源である「食」を支えることは想像以上に簡単ではない。

 私は「食」にかかわる歯科医師として2014 年から「男の介護教室」を全国16 カ所で開催し、現在では12 カ所で教室を定期的に開催している。開催を希望する団体にそのノウハウを伝え、いわゆる暖簾分けのような形で地域に合った教室をつくりあげていただいている。その成果は、2018 年にはテレビで取り上げられた他、内閣府の高齢社会白書にも掲載された。

 高齢化が加速するなか、歯科が担う役割は口腔疾患や口腔機能の対応だけではない。口から全身の健康を診て、地域を診ることが今後必要になる。地域がより豊かになるためには、「食」というキーワードも歯科が中心となることが求められる。

 厚生労働省は人生の最期まで住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けるために必要な支援体制を構築する「地域包括ケアシステム」を推進している。しかし、現実は地域によって温度差は大きく、システムが稼動していない地域も少なくない。

 「男の介護教室」では男性の介護負担を少しでも軽減すべく、これからも地域包括ケアシステムの「その先」を守る体制をつくり上げていかなければならないと考えている。