病院歯科で活躍する歯科医師

2020年9月号掲載

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2020年9月号掲載

病院歯科で活躍する歯科医師

地域も含めた医科歯科連携をさらに推進・普及させたい

 超高齢社会の日本において医科歯科連携の重要性が提唱されて久しい。「骨太の方針2020」にも明記され、国会議員の勉強会でもその重要性が注目されるほどだ。本欄では、医科歯科連携のロールモデルともいえる足利赤十字病院(小松本悟院長)の歯科医師・寺中 智氏(リハビリテーション科口腔治療室長)にお話をうかがった。

寺中:足利赤十字病院(以下、当院)は病床数540の栃木県南西部にある地域の基幹病院です。当院は、関東では唯一リハビリテーション科に常勤の歯科医師がいることが主な特徴といえます。2011年から現地に全面移転し、尾﨑研一郎先生(当院リハ科口腔ケアリーダー)を中心に医科歯科連携の基礎をつくっていただき、当科に口腔治療室が新設されてからは連携のスピードはさらに増していきました。

 その1つに、病院幹部をはじめ歯科に理解のある医師や看護師の存在が大きいです。口腔ケアによって誤嚥性肺炎の発症リスクが低下するということは、最近でこそ当たり前になりつつあります。また経管栄養だけでなく経口摂取によって十分な栄養が確保でき、早期退院につながることで病院経営にも貢献する一連の流れがデータとして見えてきたことや、昨今では歯科と全身の健康の関係性が周知されてきたことで、私が入職した2013年と比べても、かかりつけ歯科医との連携も格段に取りやすくなってきています。まさに時代の変化を感じています。

 当院のように常勤歯科医師を雇用する病院は少ないのが現実問題としてありますが、不採算部門と評される部分を付加価値としてどのように“見える化”するかが大切です。歯科における保険診療の収入だけでは評価されにくいので、副次的効果として術後の合併症の軽減や早期退院に病床稼働率の向上などで、病院側のコスト削減効果をアピールすることが求められます。

 これらを実現させるためには、医科歯科連携が鍵になります。私たち歯科がすべての入院患者さんに対して口腔ケアを実施するわけではなく看護師さんが中心となりますので、看護師さんがいかに患者さんの口腔へ意識や関心を向けていただけるかが、大事な視点といえます。当院では毎年行っている新人研修の開催時や看護師の勉強会に歯科衛生士が出向き、歯科に関する啓発活動を行うとともに、口腔ケアチームをシステム化したことでさらに認識が高まっています。

 現在の総合病院の歯科は口腔外科が多くありますが、さらに摂食嚥下リハビリテーションを含めた総合的に口腔を管理する歯科が必要ではないかと思います。急性期病院では、誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアの他に、経口摂取を段階的に進めていくための義歯修理など補綴のニーズが意外にも多いので、患者さんの医学的見地だけでなく社会的・心理的背景にも配慮したリハビリテーション的なアプローチを進めていくことで、当院はもとより地域を含めた医科歯科連携をさらに推進・普及させたいと考えています。